2021/04/27(火)
マルバウツギ
清澄山系にて。林道沿いのあちらこちらでマルバウツギの花が咲いていた(写真1)。

- 写真1
「ウツギ」と名前のつく木はとても多い。漢字で書くと「空木」で、枝の中が空洞になっていることを示す。しかし、そのような木の多くが、仲間の植物かどうかに関係なく「なんとかウツギ」という名前になっていて正直紛らわしい。その中でマルバウツギはアジサイ科ウツギ属なので、「本当のウツギの仲間」という感じがする。
この日花を咲かせているマルバウツギはたくさんあったが、ほとんどの個体に昨年の果実も残っていた(写真2)。

- 写真2
マルバウツギの果実は蒴果(さくか)と呼ばれるタイプ。カップ型で、3~4本の雄しべの跡が残る。熟した果実は基部(下の部分)が裂け、そこから微細な種子が出てくる(写真3)。

- 写真3
果実は秋に熟す。さすがにもう種子は残っていないのでは、と思って試しに果実を振ってみたら、パラパラと種子が出てきた。種子はごく小さく、表面にひだがある(写真4)。

- 写真4 方眼の1目盛は1ミリ
同じアジサイ科のガクアジサイも似たような形の果実を作るが、基部は裂けずに上の穴から少しずつ種子を出す。できるだけ風が強い日に種子を飛ばすための工夫だ。マルバウツギもそうすれば良いのに、なぜ「下から出す方式」なのか不思議だ。ガクアジサイは風の強い海沿いに分布し、マルバウツギは林内に生育するという違いのためだろうか。なんにせよ、次の花が咲いてもマルバウツギの種子は残っているのだから、「下から出す方式」であっても少しずつ種子散布することは可能なようだ。
- マルバウツギ Deutzia scabra(アジサイ科)
- ガクアジサイ Hydrangea macrophylla(アジサイ科)
(西内李佳)