2021/09/08(水)
予想外のオキアサリ
南房総の海岸にて。この周辺では、カニの化石が入ったノジュール(生物の遺骸を核として炭酸塩が集まり硬くなったもの)が落ちていることがあるらしい。完新世の地層から洗い出された化石が海岸に打ち上げられるようだ。この日はカニの化石をお目当てに海岸を歩き回ったが、それらしいものは見つけられなかった。
仕方ないので、波打ち際を掘って貝探しを始めた。すると、礫混じりの砂の中から2~3センチの二枚貝が出てきた(写真1)。

- 写真1 生時のオキアサリ(殻長は約2.5センチ)
細かい網代模様と黒色の放射彩の組み合わせが何ともオシャレで、水管を出す姿もかわいらしい。この二枚貝はオキアサリだ。九十九里浜にはこれとそっくりなコタマガイという二枚貝が住んでいるが、オキアサリはより三角形に近い形で、やや膨らみが強く、後背縁に稜(りょう)がある。
千葉県のレッドリストを見ると、オキアサリは県内では絶滅した可能性があるとされている。細々と生き残っていたようで、うれしくなった。この海岸では、殻長4センチ超の新鮮な貝殻(写真2)も落ちていることから、大きな個体も生きているのかもしれない。

- 写真2 海岸で拾ったオキアサリの新鮮な貝殻
- オキアサリ Macridiscus multifarius(マルスダレガイ科)
- コタマガイ Macridiscus melanaegis(マルスダレガイ科)
(千葉友樹)