2022/01/27(木)
根返りで越冬するオサムシ
君津市の山中にて。この日に行った山は何の変哲も無いスギ林だったが、オサムシ類の密度がとても高かった。根返りしたスギの根元の土を崩すとアオオサムシ、アワカズサオサムシ、スジアオゴミムシが次から次へと見つかった(写真1〜6)。

- 写真1 アオオサムシ

- 写真2 オサムシ類がたくさん越冬していたスギの根返り(矢印の所にアオオサムシが居る)

- 写真3 写真2の拡大

- 写真4 アワカズサオサムシ

- 写真5 アワカズサオサムシ

- 写真6 スジアオゴミムシ
根返りした木は、土ごと倒れて根元は大きな土の塊となっている。この土の塊の中が生きものの越冬場所として好まれるようだ。オサムシ、ゴミムシ類の他に、カメムシ、ムカデ、トカゲ、カエルなども越冬している。皆、わざわざこの土の固まりに登ってから潜っているわけだ。
オサムシの密度が高いと言っても、どんな根返りでも良いわけではなかった。写真7の二本並んだ根返りのうち、手前の根返りにはたくさん居たが、奥の根返りにはほとんど居なかった。奥の根返りの土は比較的さらさらと崩れ、手前の方がやや粘土質で硬い印象だった。虫はこんな微妙な違いを選んでいるようだ。

- 写真7 手前の根返りにオサムシがたくさん居た
近くにほぼ垂直に近い崖を見つけた。崖の土は硬く固まり、表面にコケが生えていた。こんな硬いところには居ないだろうと思ったが、少し削ってみると意外にもここでも上記3種がたくさん出てきた(写真8)。最も個体数が多かったのはスジアオゴミムシだった(写真9)。このようにどの個体も体より一回り大きな空間を土の中に作り、その中でたいてい一匹ずつで寝ている。こんな硬い土にどうやって潜り、土中に穴を作るのだろうか。

- 写真8 土中で越冬しているアワカズサオサムシ(矢印のところ)

- 写真9 硬い土中にポッカリと穴を空けている(スジアオゴミムシ)
冬季のオサムシ採集には根返りや崖を掘るのが良いということは、知識や経験で知っていたが、散々掘っても何も見つからないことも何度も経験している。この日のように狭い範囲でたくさんのオサムシを掘り出したのは生まれて初めてだった。一生のうちにはこんな日もあるものだ、と昆虫の採集は奥が深いと改めて感じた。
- アオオサムシ関東平野多摩川以北亜種 Carabus insulicola kantoensis (オサムシ科)
- アワカズサオサムシ(ルイスオサムシ房総半島南部亜種) Carabus lewisianus awakazusanus(オサムシ科)
- スジアオゴミムシ Chlaenius costiger costiger(オサムシ科)
(斉藤明子)