フィールドノート No.2237

 2024/01/27(土)

 地層と貝化石の観察会

 この日は、地層と貝化石の観察会を館山市で行った。寒空の下、長靴を履いて川の中を歩きながら、地層と貝化石を観察した(写真1)。

  • 写真1 観察会の様子

 観察した地層は数千年前の海底に積もった泥からできていて、青灰色の泥層中に保存状態の良い貝化石がたくさん含まれている(写真2)。

  • 写真2 泥層中の貝化石(スコップの刃の長さは約6センチ、写真の上が地層の上位)

 二枚貝の化石は、二枚の殻が合わさった状態で、地層中に垂直に近い角度で埋まっているものが多い。二枚貝の死後、貝殻が海底から掘り出されることなく、生息していた場所で化石になったものと考えられる。この場所でよく見つかる貝化石は、ウラカガミ(写真3)、イヨスダレ(写真4)、フスマガイ(写真5)などの泥底に潜って暮らす二枚貝類だ。

  • 写真3 ウラカガミの化石(目盛りの単位はミリ)
  • 写真4 イヨスダレの化石(目盛りの単位はミリ)
  • 写真5 フスマガイの化石(目盛りの単位はミリ)

 現在でも内湾域の泥底に生息する二枚貝類だが、生きた個体には、あまりお目にかかれない。現在では珍しい二枚貝類が、数千年前のこの場所には数多く暮らしていたことが実感できる。

 泥層中にはノジュールと呼ばれる丸くて固い石も含まれていて、この中からカニや貝などの保存状態の良い化石がよく見つかる(写真6)。

  • 写真6 カニ化石が入ったノジュール(目盛りの単位はミリ)

 数千年前の生物が死んで腐敗するときに海水中のカルシウムイオンと生物の軟体部由来の炭素成分が化学反応を起こし、炭酸カルシウムができる。すると、周囲の泥ごと固くなる。ノジュールの形を見ると、その中に含まれている化石が予想できる。カニ化石が入っているノジュールを発見した参加者は、大喜びしていた。

 この日は、参加者全員が貝化石を見つけることができた。中には、貝化石の種類が場所によって異なることに気付いた参加者もいた。様々な発見があり、真冬の寒さも吹き飛ぶ観察会だった。最後に、化石のクリーニング方法や牛乳パック標本箱の作り方(写真7)、化石標本にラベル(名札のようなもの)を付ける大切さをお伝えして、観察会を終えた。

  • 写真7 牛乳パック標本箱
  • ウラカガミ Dosinia corrugata(マルスダレガイ科)
  • イヨスダレ Paphia undulata(マルスダレガイ科)
  • フスマガイ Clementia vatheleti(マルスダレガイ科)

(千葉友樹)