フィールドノート No.2244

 2024/07/05(金)

 船塚古墳のワラビ

ダというと日陰の植物という印象が強いが、日光の降り注ぐ草原を好む仲間もいる。代表的なのがワラビ(図1)で、今回調査した成田の船塚古墳の草地でも草刈りされた古墳の斜面にたくさんのワラビが生育していた(図2)。よく恐竜の復元画でアフリカの草原のような草地が舞台として描かれているが、少なくともジュラ紀には単子葉類の草原は成立しておらず、シダの草原が広がっていたはずである。

  • 図1 ワラビ。葉が3つにわかれ、全体として三角形に見えるのが特徴。
  • 図2 成田市赤坂公園内にある船塚古墳。斜面に転々とワラビが見える。

図3は、展開途中の葉の先端で、いわゆるワラビ巻の状態が観察できる。ゼンマイ、ヘゴ、ウラジロなど、ほとんどのシダはこの「ワラビ巻」状の芽をつくる。これに対して、種子植物の葉は一部を除きワラビ巻をつくらない。最近の研究では、平らな葉はシダ類と種子植物でそれぞれ独立に進化したと考えられている。「ワラビ巻」がほぼシダにしか無いのも、こうした進化の過程が影響しているのかもしれない。


  • 図3 ワラビの葉の先端。ワラビ巻になっている。
  • ワラビ Pteridium aquilinum(コバノイシカグマ科)

(斎木健一)