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はじめに 全国に草で作った馬や牛を伝える地域は多くあります。千葉県でも昭和の半ばまで、毎年旧暦7月7日にマコモなどを材料に「七夕馬」などと呼ぶ馬や牛を作り、子供達がこれを引き、刈った草を背負わせて家に帰る行事が各地で盛んに行われていました。 房総のむらでは、これまでに県内各地の七夕馬、約100件余を収集してきました。いずれもかつて作った経験のある方々にお願いしてできた資料です。これらの資料は平成9〜12年度の4か年にわたり、企画展「草で作ったウマとウシ」として展示しました。このページでは企画展図録の中から千葉県の七夕行事の内容と素朴でかわいらしい草で作った馬や牛をご紹介しましょう。 |
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七夕行事と馬 七夕行事といえば、笹竹に短冊をさげて星に願いをかける星信仰がよく知られていますが、日本各地にはそのほかさまざまな七夕があります。その多くは農作物の豊作祈願や先祖を迎えるという祖霊信仰によるものです。日本にも古代から星への信仰はあったのですが、そこへ中国から伝わった「乞功奠(きっこうでん)」という行事が重なって、芸事の上達祈願の七夕が平安時代中頃に宮中で成立したといわれています。それに対して祖霊信仰に基づく七夕行事は、盆のほぼ一週間前に行われていました。また、祖霊を迎えるための乗り物として草製の馬や牛を作る習俗は、東日本を中心にかなり広範囲に分布します。その中でも旧暦もしくは新暦の七夕にあわせて作るのは、千葉県や埼玉県それに福島県などで確認できます。 |
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千葉県の七夕行事 千葉県では馬や牛を作る日は、ほとんど旧暦7月7日、あるいは新暦で月遅れの8月7日に限られています。行事として最も多い例は、7日の早朝に、子供が草製の馬や牛を引いて野や水辺に行き、そこで草刈りをするものです。刈った草は馬牛に背負わせ、再び引いて家に戻ってきます。 |
子供が草刈りに引いていく |
笹飾りを立てて馬・牛を飾る |
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馬・牛を屋根にあげる |
向かい合わせに飾る |
庭先には普通、短冊をつけた笹飾りが立てられており、その根元に刈った草を敷いて上に馬牛を飾ります。うどんや赤飯などを一緒に供えることもあります。1日飾っておいた馬牛は最後は屋根にあげたり荒神や屋敷神に納めるところもあります。 また、これにあてはまらない行事もあります。東葛地区では子供の草刈りは行わず、一対の馬を高いところに向かい合わせに飾ります。 |
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また、印旛沼・手賀沼周辺では、大人が馬を水辺に持っていって流したり、さらに同じものをもう1体作って、1年間、玄関などに飾っておく例もあります。この馬は先祖を迎えるものだともいわれます。安房地方では主に縁側や窓辺に飾って先祖を迎えにいかせるといいます。千葉県では「七夕」という行事が彦星と織姫の星伝説とはあまり関係なく、むしろ、お盆の前の先祖迎えや穀物の豊作祈願の行事として行われていたことが分かります。 |
水辺に流す |
玄関などに飾る |
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かたちと地域 画像をクリックすると各型式の資料一覧のページへ移動します。 |
東葛型 |
印旛沼・手賀沼型 |
香取型 |
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海匝型 |
九十九里型 |
安房型 |
内房型・その他 |
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七夕馬は千葉県内のほぼ全域で作られていましたが、地域により馬の形や飾り方、さらに行事の意味などに特徴がみられます。ここでは県内の七夕馬を形や行事などから7つの型に分類しました。7分類の名称と主な特徴は次のとおりです。(1)東葛型(尾長で後足が細く高所へ飾る。)(2)印旛沼・手賀沼型(尾長で後足が細く川や池へ流す。)(3)香取型(足が太く頭にオカマ苗(稲の苗)をつける。)(4)海匝型(胴が細くマコモを巻きつける。)(5)九十九里型(装飾的でたてがみを高く組み上げる。)(6)安房型(チガヤを材料にし窓辺に飾る。)(7)内房型(口は上下に分かれ、後頭部は左右に分かれている。) |
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型式分類と分布図 |
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展示図録のご案内 平成9・10年度企画展示図録 『草で作ったウマとウシI・II―七夕行事を中心に―』 平成10年3月発行 A4横 44頁 300円 千葉県内の草製の馬について、特に七夕行事との関係から約40件の事例を紹介しています。巻末には、かつて七夕馬の一大生産地であった茂原市大芝地区について、その製作方法など伝統的技術としての七夕馬の製作工程を紹介しています。 平成11・12年度企画展示図録 『千葉県の七夕馬―草で作ったウマとウシIII・IV―』(品切れ中) 平成12年6月発行 A4横 53頁 400円 千葉県各地では、七夕の時にマコモなどの植物で馬や牛を作っていました。それは先祖が乗る乗り物だとか、牛馬の慰労の為であるとか意識されており、形も地方によって特色が見られます。図録では当館で収集した県内の七夕馬110件を、行事内容や馬の形、または馬の飾り方などから7つの型に分けて紹介しています。 | |||||||||||||||||||||||||||||
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