No.1745 2019/11/20(水)

 ケイワタバコ


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 清澄山系にて。渓谷沿いの林道脇の岩壁に白いものが目立つ(写真1)。ここは6月に開花していたケイワタバコ群落だ。

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写真1
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 白く見えるのはケイワタバコの葉(写真2)。徐々に葉緑素が抜けて白くなり、やがて葉の縁から茶色く枯れていく。黄葉することはない。この時期のケイワタバコの株には、枯れゆく葉だけではなく、枯れた果実(写真2の水色の矢印)が付いている。また、翌春に開く葉(写真2の黄色の矢印)もすでに用意されている。

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写真2
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 果実は長さ7ミリ前後の紡錘形で、乾いて割れたすき間から細かい種子を落とした後だ(写真3)。

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写真3
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 そして株の根本に見える緑色の塊が幼い葉だ(写真4)。ケイワタバコの幼い葉は丸めたちり紙のような姿でこのまま冬を越し、翌春にしわが伸びるようにして展開する。

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写真4
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 付け根から褐色の毛が幼い葉の外側を守るように伸びている(写真5)。しかしその毛は短くまばらで、とても寒さや乾燥を防ぐのに十分には見えない。ケイワタバコが分布する関東から近畿地方の低地は、このいい加減な防寒でも冬を越せるぎりぎりの気候なのだと思われる。
 (尾崎煙雄)

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写真5
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 ケイワタバコ Conandron ramondioides var. pilosus(イワタバコ科)

 


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