教室博日記 No.2025

 2021/10/08(金)

 消えた露頭を探す

 2年前の2019年6月、君津市の三舟山に登った。平坦な山頂展望台からの眺望を堪能し(写真1、教室博日記No.1706)、登った道とは異なるルートを下る途中で(写真2)、貝化石がぎっしりとつまった露頭(地層がよくみえる崖)を見つけた(写真3、4)。地質図を確認すると下総層群地蔵堂層のようだったが、その後調査することもなく、そのままになっていた。

  • 写真1 三舟山からの眺望
  • 写真2 貝化石が見られた山道
  • 写真3 2019年6月当時の貝化石層
  • 写真4 ぎっしりと貝化石が入っている

 今年になって三舟山を再訪し、ふと思い出して以前降りた道を歩いたが、化石の露頭は見つからず、下まで降りてしまった。道を間違えたかなと少し行ったり来たりしたが、どうしても見つからない。

 もやもやしながら、もう一度探そうと、以前撮った露頭周辺の写真を引き延ばして、それを見ながら後日再び登った。すると2年前の写真に写っている樹木の切り株が目に入った。露頭はその少し下の方で、確かに山道の階段のようすも似ている(写真5、6)。斜面には土砂が被り、植生が繁茂しているが、下の方に白っぽい貝化石が少し見えていて(写真7)、やはりこの崖に間違いない。

  • 写真5 2019年6月 赤丸の切り株が目印になった 右側の崖に貝化石
  • 写真6 2021年10月 切り株はそのまま 右側の斜面は土砂が被り、植生が生えている
  • 写真7 下の方に貝化石が見える
  • 写真8 化石が入っている層は硬い

 2年でずいぶん変わってしまったと思ったが、もしかすると2019年秋の風台風(15号)のせいかもしれない。房総丘陵のあちこちで倒木被害があり、山のようすが変わってしまった。三舟山でも倒木や土砂が崩れて斜面を被うということはあったであろう。柔らかい土が露頭を被って、植生が繁茂したため、貝化石が見えなくなったと思われる。記憶違いでなかったのでほっとした。今度は化石に詳しい職員に見てもらおうと思う。

 できれば表面の土砂を落として、元の貝化石層に戻したいところだが、多くの人が上り下りする山道なので、そのままにしておいた方がいいかとも思っている。

(八木令子)