フィールドノート No.2202

 2022/11/11(金)

 カズサヒロコバネの幼虫

 君津の山中にて。ここは今年5月に訪れた際、カズサヒロコバネの成虫をたくさん目撃した場所だ(フィールドノートNo.2105)。きっと幼虫がいるに違いないと思い、ジャゴケを裏返して探すとすぐに見つかった(写真1)。大きさはまだ小さく3ミリほど。

  • 写真1 ジャゴケの裏面に静止するカズサヒロコバネの幼虫

 ジャゴケは周辺の崖にたくさん生えているが、写真2のようにかなり湿った場所でないと幼虫は居ないようだ。幼虫のからだにも水滴が付いている。すぐ横では常に上から水がわずかに流れている(写真3)。

  • 写真2 湿った崖に生えるジャゴケ
水がしみ出す崖
  • 写真3

 幼虫はジャゴケの表層の組織を削り取るように食べるため、写真4のような食痕がついたジャゴケの裏側をめくってみると見つけることが出来る。昼間には表側で幼虫を見掛けないので、夜間に表へ出てきて食べているのだろうか。

水がしみ出す崖
  • 写真4 ジャゴケの表面についた筋状の食痕(茶色い部分)

 フィールドノートNo.2105で、この種はチョウ・ガ類の中で唯一の千葉県固有種と書いたが、最近、千葉県から新しい種が発見されて唯一の千葉県固有種ではなくなってしまった。研究が進んで千葉県固有種が増えるのは喜ばしいが、房総丘陵にだけ生息するこの小さなガに、なぜか肩入れをしたくなる。

  • カズサヒロコバネ Neomicropteryx kazusana(コバネガ科)
  • ジャゴケ Conocephalum conicum(ジャゴケ科)

(斉藤明子)