34 大野屋旅館


所在地 成田市
竣工年 S12
所有者 個人
設計者 不明
施工者 大屋
構造 木3
外壁 下見板張り
屋根形状・葺材 入母屋造,スレート葺
建築規模 603.3m2

新勝寺の門前には現在8軒の3階建の建築が存在している。その殆どが旅館建築で,その中でも大野屋は新勝寺近くに立地し規模も大きい。現在の建物は昭和12年に建て替えられたものであるが,その前の建物は平入の入母屋造で,1階に間口一杯の土間と式台を構え,2階が正面から側面に矩折れに入側縁が回っている様子が,明治期刊行の『日本博覧図』などの資料で知ることができる。                                

今の建物は間口8間,妻入りの入母屋造で,新勝寺側の右側面流れに望楼が付いている。1階は間口一杯の広い土間と式台,中央に奥へ通じる廊下を取り,右手前から男帳場(控室)・帳場・厨房,左側は女帳場と家族のための居室となる。左側面後方の突出部には主人の居間と最も重要な客のための2間続きの部屋が続く。また,厨房の下側には食器等の収納戸棚が合理的に設けられている。2階は正・側面に矩折れの入側縁と中央T字状の中廊下をとり,裏の突出し部の入側縁へ接続する。客間は個室と建具で仕切られ部屋が半々であるが,どの部屋にも床の間と棚が付く。

3階は矩折れの入側縁の内側に60畳と54畳2間続きの大広間,奥手隅に能舞台が設けられている。3階は宴会場だけの用にあてられたといい,前の間の太いモミジの床柱・幅広の檜の天井板は台湾材,能舞台の銅材の床板・欄間に組込んだ黒柿の板など,いわゆる銘木をふんだんに使っている。1〜3階をとおして材料や仕様が上質であることに加え,一部に新しい要素も認められるが,前時代の旅館建築の雰囲気も充分窺うことのできる建築である。[事務局]

全景


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