たちばなぜき

5 橘堰のハヤボシ


山田町

産業関係・農業・排水施設

長約7m,幅3.5m,深さ0.75m
1909(明治42)年

橘堰は,香取郡山田町の田部2,696と仁良1,290の境に位置している。

香取郡誌によると,橘堰が築かれたのは古く「慶長2年宮下堰および荒波堰,又同10年田部,仁良村境の水田60石に橘堰を築く」と記されている。

江戸時代には,この堰の所有権をめぐり田部と仁良間において訴えがおこされているが,両地区とも等分にとの裁きであったといい伝えられている。

ハヤボシという名の由来は,「早く干す」という言葉が語源になったといわれている。

ハヤボシの工事が行われたのは1909(明治42)年で,当初石積みのものであった。その後,1938(昭和13)年の,溜め池改修工事の際に一部コンクリート補修をして現在に至っている。

このハヤボシは,長さ約7m,幅3.5m,深さ0.75mで,溜池の水位を保つための施設である。ハヤボシの高さによって溜池の水量が決まるため,下流に水田を多く持つ田部と,上流に多く持つ仁良との間において,この位置決めはかなり慎重に行われたと言われている。それは,ハヤボシの位置が高い場合,大雨の際に上流の水田が水に浸かり稲に被害がでる。また,堰の決壊のおそれも生じる。低い場合は,溜池に十分な水量が確保できなくなる。そのため,田部の水田およそ170haに,十分な水の供給ができなくなるためである。

(在原 徹)

地形図 「岩部」(略)

写真5-1 橘堰全景 (1998年) 写真5-2 ハヤボシ (1998年)

参考文献

1) 千葉県香取郡役所:千葉県香取郡誌,1921年
2) 山田町教育委員会:橘堰解説板,1996年


Back
Home
Up
Next