たつのい(つうしょう「げんばいど」)

13 竜の井(通称「玄蕃井戸」)


銚子市

産業関係・醸造業・井戸

間口367cm,奥行223cm,高さ230cm
1868(慶応4)年

竜の井(通称「玄蕃井戸」)は,江戸の末期から明治時代にかけてヒゲタ醤油株式会社の前身であるヒゲタ醤油の醸造用水として用いられていたものである。

醤油醸造用水については,古来酒造りの場合ほど厳密な注意を払わないことが常であった。これは恐らく多量の食塩を使用するので,水の成分のわずかな違いは,問題にしなかったと思われる。当初は飲料に用いる普通の井戸水を使用していたが,田中玄蕃十代貞短氏の頃より製造石数も増加し,多量の良質の水が要求され,1868(慶応4)年に通称「玄蕃山」といわれる所有の山林に奥行百間にも達する横穴をうがち地下水を集め,これを竜の井と名付けた。そして,従来の井戸水を廃して,この地下水を醸造用に使用した。この竜の井は現在でも残っている。

地下水は,何本もの取水口を通って集水場に集められ,取り出されたと思われる。集水場の中には竜神像があり,その口より水が流れ出るようになっている。この水を土管を通して今の東町285番地の醸造場に引込み,醤油を作るのに用いた。1897(明治30)年頃,東京の衛生試験所に送り水質検査を行なったところ,東京の水道の水よりも質が宜しいとの事が記されている。

現在醤油の醸造用水としては,使用されていない。その他の工場では,当初より普通の井戸水を使用していたが,昭和に入り製造石数の増加に伴い第二工場(当時第五工場)の建設の際に深井戸を堀り,その後増設して現在は,第一工場3本,第二工場4本の深井戸を使用している。

(広野平蔵)

地形図 「銚子」(略)

写真13-1 創建当時のままの集水場(1997年) 写真13-2 創建時の横穴の入り口(1997年) 写真13-3 竜神象がまつられている (1997年)
写真13-4 集水場からの取水口 (1997年)

参考文献等

1) ヒゲタ醤油株式会社:ヒゲタ醤油株式会社々史,ヒゲタ醤油株式会社,1972年
2) 田中玄蕃氏の来譜(「玄蕃日記」より田中真子遺稿)


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