きゅうたこゆうびんきょく

88 旧多古郵便局


多古町

その他・郵便局
木造2階建,桁行5間,梁間5間
1942(昭和17)年

本建築は1872(明治5)年,県内第一号の郵便局として多古,大総,野尻に開業した3局のうちのひとつ,多古郵便取扱所を前身とする。当初地元の有力者平山伊之助宅の敷地内に取扱所が設けられたが,1906(明治39)年に局舎が新築された。その後局舎の老朽化にともない,1942(昭和17)年に現在の建物が建てられた。本建築は1階で郵便業務を行い,2階を電話交換所としていたが,1965(昭和40)年に局が移転した後は,倉庫として使用されている。

設計,施工は地元の大工高木某による。木造モルタル仕上げ,総2階建の建物で,寄棟屋根に瓦が葺かれている。正面5間約9mのうち中央の4間約7.2mには上下階とも開口部が設けられており,地域の郵便局に相応しい開放的なつくりとなっている。

外壁腰壁部分には昭和初期に流行したスクラッチタイルを張り,念入りな仕上げとするとともに,建物の基部に堅牢な印象を与えている。また正面入口脇には郵便局のマークと桜および葉をあしらった特注の陶板が掲げられ,その下部には鮮やかな磁器質タイルが張られており,装飾への配慮が見られる。

この装飾は建物にシンボル性を付与し,郵便局としての役割を目に見える形で示している。

現所有者の話によると施工時には松丸太の杭を打ち,その上に石を並べて地業を施したとのことであり,構造強度的な配慮も十分になされている。

初期の郵便局においては輸送手段の中心は水運であったため,利根川沿いに設けられるものが多かったが,利根川から離れた多古に県内初の郵便局が開局されたことは,当時の周辺地域における多古の位置付けを物語っている。地域の中心の郵便局として相応しい,構造や意匠が採用された本建築は,わが国の近代化の過程の中での郵便局の重要性を今に伝える遺産である。

(江口敏彦)

地形図 「多古」(略)

写真38-1 旧多古郵便局(1997年)
写真88-2 正面入ロ脇装飾(1997年)

参考文献

1)毎日新聞社:干葉百年,1968年
2)産経新聞千葉版,1996年8月6日


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