調査研究事業:「房総(千葉県)の地衣類誌」の概要
 
第2の目標: 千葉県内における地衣類の分布の解明
 
2-3.日本測地系と世界測地系の問題
最初に使用した「千葉県メッシュマップ」

当館では開館(1989年)後まもなくから,標本の産地の位置情報を,3次メッシュ番号として記録するため,専用の地図帳「千葉県メッシュマップ」(文献1)を印刷しました.2次メッシュの範囲(1/2万5千分の一地形図図幅に相当する.10キロメッシュともいう)を1つの地図として,縦横10等分する線を引いて100の3次メッシュに区切りました.千葉県全域をカバーする,このような地図77からなる地図帳です.それぞれの地図には2桁の番号をつけ,地図内のメッシュにも2桁の番号を与え,合わせて4桁で3次メッシュを示す「千葉県メッシュコード」を採用しました.通常の3次メッシュコードが8桁の数字列なのに比べ,短く使い勝手が良いものでした.この地図は,当館の植物・菌類分野の調査の必需品となりました.

【文献1】千葉県立中央博物館(編).1994.千葉県メッシュマップ.77maps.千葉県立中央博物館,千葉市.

日本の地図は緯度経度が12秒ずれていた

船舶などへのGPSの普及に伴って,地図がずれているのではないかと言われるようになったといいます.そしてついに,平成14年(2002年)4月1日から測量の基準となる地図が,日本測地系から世界測地系に変更されることになりました(ウェブ1).そのずれとは,緯度で12秒,経度で12秒,東京付近では約450mに達します(ウェブ2).

このように測地系を変更することになったため,日本測地系を旧測地系,世界測地系を新測地系とも呼びます.

【ウェブ1】国土地理院,「世界測地系の導入に関して」.https://www.gsi.go.jp/LAW/jgd2000-AboutJGD2000.htm(2022.7.13閲覧)

【ウェブ2】国土地理院.「日本測地系と世界測地系」.https://www.gsi.go.jp/LAW/G2000-g2000-h3.htm(2022.7.13閲覧)

あらゆる情報が世界測地系の地図に表示されていく

こうして日本の地図は全て世界測地系に切り替えられることになりました.この測地系に基づいてGIS(地理情報システム)が発展していきました.GISというのは,コンピューター上で,地図に様々なデータを重ねていく技術のことで,行政が集めている様々なデータもこういったシステムで運用されています.身近な例では,カーナビのシステムも,GISを活用(GISで作られた地図上に,GPSで得られた位置情報を表示)したものになります.

 

その一方で,菌類・植物の分布情報は,日本測地系の地図の3次メッシュで表示されたままでした.膨大な数の収集した標本に基づくデータを,様々な形で評価したり活用したりするためには,世界測地系に移行する必要がありました.

 

 

 
「第2の目標: 千葉県産内における地衣類の分布の解明」に戻る ←