調査研究事業:「房総(千葉県)の地衣類誌」の概要
 
第2の目標: 千葉県内における地衣類の分布の解明

「千葉県に生育する地衣類の種のリストを完成すること」を最初の目標に挙げましたが,チェックリストの第4版をまとめた2008年頃には,ある程度達成できたと実感できるようになりました.そこで,それぞれの種の県内における分布状況の解明を第2の目標とし,2012年頃から調査を始めました.

 

※「千葉県産地衣類のリストの完成」は終わったわけではありません.千葉県のみならず,日本産地衣類の分類解明,リスト完成までにはまだまだ多くの課題が残っています.その解明と平行しながら,徐々に千葉県産の地衣類のリストを充実させていく予定です.

 

2-1.それまでの分布解明状況

2-2.房総の地衣類誌と「千葉県レッドデータブック」

2-3.日本測地系と世界測地系の問題

2-4.3次メッシュとは

2-5.地衣類の分布調査

2-1.それまでの分布解明状況
「房総の地衣類誌」の最初の目標とした「千葉県に生育する地衣類の種のリストを完成」させるために,主に県の南部で調査を進めていった結果,北部はほとんど調査されず,また南部であっても未調査の地域が広く残されました.また,それぞれの種の分布解明を目的としないため,ウメノキゴケのような普通種は発見しても採集しない例もしばしばあったため,標本のデータからは,県内における分布状況の把握は難しい状態でした.
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2-2.房総の地衣類誌と「千葉県レッドデータブック」

「房総の地衣類誌」では,千葉県内における地衣類の出現種を解明したり,その分布状況を明らかにしていきます.こういった情報は,県内における地衣類の多様性の評価に役立つことになります.分かりやすい例では,県のレッドデータブックにおける,掲載種とそのカテゴリー(ランク)の評価に活用されています.この調査研究事業の成果があってはじめて,「千葉県レッドデータブック ―植物・菌類編―」の地衣類における選定が可能になったと言えるでしょう.

 

レッドデータブックの作成や改訂の準備は,通常は限られた期間しか行われないため,満足のいくデータが集まらないのが現状です.そのため,この「房総の地衣類誌」のように継続的な調査がなされることが必要となるのです.

→ ●「房総の地衣類誌と千葉県レッドデータブック」についてもう少し詳しく
2-3.日本測地系と世界測地系の問題

地衣類を含む当館の植物・菌類分野では,開館(1989年)の頃から,県内における標本の産地の情報を3次メッシュで記録していました.しかし,日本で使用されていた地図の緯度経度(いわゆる旧測地系)が世界のもの(いわゆる新測地系)からずれていることが判明したため,地衣類では,2012年頃から,新測地系の緯度経度による記録に切り替えました.その緯度経度から,簡単な計算式によって新測地系の3次メッシュも,旧測地系の3次メッシュも導き出すことができるからです.

 

現在では,産業等の様々な情報も緯度経度と新測地系におけるメッシュ上への表示可能な形で行政によって集約され,地理情報システム(GIS)で活用されております.地衣類をはじめとする生物の分布情報も,同じ位置情報を使用することにより,GIS上で,他の情報との関係を検討することも可能になってきます.

→ ●「日本測地系と世界測地系の問題」についてもう少し詳しく
2-4.3次メッシュとは

当館では,植物・菌類分野では,分布情報を3次メッシュを記録する方法をとっていました.それを地衣類では,世界測地系の緯度経度のデータを記録し,それから3次メッシュに変換するようにしました.

この3次メッシュというのは,緯度で30秒,経度で45秒の範囲を1区画をとするメッシュで,一辺が約1kmのため,1キロメッシュと呼ばれています.千葉県内の生物の分布情報を把握するのに,ちょうどよい大きさということになります.

→ ●「3次メッシュについて」についてもう少し詳しく
2-5.地衣類の分布調査

千葉県全土で3次メッシュは5400以上もあります.この全ての3次メッシュを調査することは,恐らく何十年かかってもできるものではありません.そこで,全土を網羅する77の2次メッシュのできるだけ多くで,少なくとも1地点(3次メッシュ)で調査することを目指し,2012年から調査を開始しました.

 

各地点は直径約50m程度とし,出現する全種(特に大型地衣)を網羅するよう採集します.収蔵スペースと経費を節減するため,現地で同定が容易なものについては,小さなパケットを使用することとしました.

→ ●「地衣類の分布調査」についてもう少し詳しく
 
 
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