#025 Tuckermannopsis sepincola (Ehrh.) Hale

広義アワビゴケ類(cetrarioid lichens)の中では,地衣体背面が黄色を帯びず(ウスニン酸を欠き),褐色を帯びる種群に属し色調が似るオリーブゴケ(Melanelia olivacea)の裂片は基物に圧着するのに対し,本群では縁部と先端が斜上するものが多い.

 その中で本種は,地衣体が非常に小さく,それに比べて比較的大きな子器を裂片先端にしばしば生じることで特徴づけられる.高山でしか見られない種である.

【フォトビオント】Trebouxia

【外部形態等】地衣体は小さな葉状.裂片は類線形でわずかに分枝し,斜上する.背面は灰色を帯びた褐色から褐色(陰になる部分では灰緑色),概ね平坦で,平滑,多少とも光沢がある.腹面は白味を帯び,平滑.粉芽・裂芽を欠く.子器は裂片の先端に生じ,はじめ概ね円形,後に多少とも横に広い楕円形.子器盤は概ね平坦で褐色,明らかに光沢がある.

【化学成分】プロトリケステリン酸(文献1)

【分布と生態】高山周辺の,樹幹・樹枝に着生する.北海道~本州中部(文献1).

スルメゴケ/鯣苔

Tuckermannopsis sepincola (Ehrh.) Hale

【異名等】Cetraria sepincola (Ehrh.) Ach.
【文献1】吉村庸.1974.原色日本地衣植物図鑑.349 pp., 48 pls.保育社,大阪市.
執筆:原田浩,2021