#087 Bryoria smithii (DR.) Brodo & D.Hawksw.

【外部形態等】地衣体は樹状,基物上に平臥するか,多少とも懸垂し,長さ15cm程度に達する.主枝はまばらに等長ないし不等長二叉分枝し,これにほぼ直角に出る側枝を多数生ずる.表面は褐色ないし暗灰褐色で普通は顕著な光沢がある.粉芽塊は,分枝の各所に生じ,最初紡錘形で,後に楕円形,白い顆粒状の粉芽を生ずるが,必ずしも粉芽は典型的ではなく,時に判別が難しい.粉芽塊の周囲あるいは表面から短い分枝を生じ,これが生長するとウニのように棘状となることがあり,しばしば粉芽塊を覆い尽くす.日本産では子器は未見.(文献2,一部改変)

本種と同様の粉芽塊を作るコフキイバラキノリBryoria furcellata は,主枝からほぼ直角に出る側枝を欠くことで区別できる.「文献2」が発表されるまでは,本種はコフキイバラキノリと混同されていたと思われる.

本種と同様の分枝パターンを示すオオオニノヒゲBryoria confusa は,粉芽塊を欠き,ヒマラヤ地域を本拠地とする種である.国内で本種とされていた個体のほとんどは,本種コフキオニノヒゲの粉芽塊が未発達の個体であり,丹念に探せば初期の粉芽塊を見つけることができることが多い.

【化学成分】次のいずれか.(1)スチクチン酸・コンスチクチン酸および関連物質;(2)サラチン酸;(3)成分は検出されず.(文献2)

【分布と生態】分布: 日本・ヒマラヤ地域(中国雲南省・四川省を含む);長野県・山梨県・栃木県.

生態:山地帯上部から亜高山帯の,主としてカラマツなど針葉樹の樹幹,枝に着生する.(文献2)

コフキオニノヒゲ/粉吹鬼の髭

Bryoria smithii (DR.) Brodo & D.Hawksw., Opera Bot. 42: 152 (1977); 文献2.

【異名等】≡ Alectoria smithii DR., Ark. Bot. 20A (11): 15 (1926).

【文献1】吉村庸.1974.原色日本地衣植物図鑑.349 pp., 48 pls.保育社,大阪市.

【文献2】原田浩・王立松・吉村庸.2012.  日本地衣類誌(2)ハリガネキノリ属Bryoria(ウメノキゴケ科).Lichenology 10: 147–168.

執筆:原田浩,2021