#102 Peltigera venosa (L.) Hoffm.

【外部形態等】地衣体は葉状,主な共生藻は緑藻で,藍藻は地衣体腹面に青緑色か緑褐色の小粒状の頭状体として分布する.地衣体は小形(径0.5 – 3 cm),単葉,あるいは2–3裂に浅くないし深く切れ込み複葉となり概ね扇形,基部で基物に付着し,先端部は斜上する.普通は1個体ずつばらばらとなり,密生することはない.背面は乾燥時は灰緑色ないし淡褐色で,湿潤時は鮮緑色となる.腹面は白色,脈は黒褐色で,基部から放射状に伸び,明瞭ないし不明瞭,ややフェルト状.子器は円盤状で地衣体の先端縁部につく.(文献2,一部改変)

【化学成分】デプシド類(テヌイオリン,ジロフォール酸メチルなど),トリテルペン類(ゼオリン,フレブ酸A,フレブ酸B,構造未定のトリテルペン物質)などを含む.(文献2)

【分布と生態】分布: 北海道・本州; 亜高山帯~高山帯.北半球(北米,欧州,アジア)の温帯から高山や極地に分布する(周極分布).
生態: 多少とも開けた場所の地上,崖などに生ずる.(文献2)

ヒメツメゴケ/姫爪苔

Peltigera venosa (L.) Hoffm., Descr. Adumb. Lich. 1: 31 (1790); Yoshimura, Lich. Fl. Japan in colour: 205-206, pl. 38 (1974); Vitikainen, Acta Bot. Fenn. 152: 84-86, fig. 124 (1994).

【異名等】≡ Lichen venosus L., Sp. Pl.: 1148 (1753).

【文献1】吉村庸.1974.原色日本地衣植物図鑑.349 pp., 48 pls.保育社,大阪市.

【文献2】吉村庸・原田浩・Hur Jae-Seoun.  2009.  日本地衣類誌(1)ツメゴケ属Peltigera.  Lichenology 8: 31 –72.

執筆:原田浩,2021