#103 Hyperphyscia crocata Kashiw.

【外部形態等】地衣体は葉状(鱗片状),直径0.5 – 2 cm,しばしば多数が集合し大きなマットを作る.裂片は幅 0.4 – 1.3mm,多少とも羽状に,あるいは不規則に分枝し,間もなく互いに接し,時にわずかに重なり,基物に圧着する.背面は概ね平坦,マキラを欠き,平滑,褐色から紫褐色,灰褐色,灰緑色など,地衣体周辺部あるいは裂片縁部では時に橙色を帯びる.粉霜を欠き,地衣体中央部の背面か類縁部に類円形から不定形の粉芽塊を生じる.腹面は(基物に強く圧着するため観察できない)褐色から暗褐色,目立たない偽根を散生する(地衣体からはみ出て見えることはまれ).子器はややまれ,直径1mmまで,縁部は全縁,果托には偽根はない.子器盤は赤褐色,粉霜を欠く.上皮層は異型菌糸組織,下皮層は繊維菌糸組織.子嚢胞子は 16 – 20 × 7 – 8 um.(文献1,一部改変)

【化学成分】地衣体背面K-

【分布と生態】国内の分布:千葉・静岡・愛知・滋賀,愛媛・高知,鹿児島,屋久島,伊豆諸島(神津島・三宅島)(Kashiwadani 1985, 原田 2008).本種は暖温帯に広く分布するが記録は比較的少ない.千葉県においては,都市周辺も含めてごく普通に産することから,他県では単に見落とされているに過ぎないと思われる.

生態:主として樹皮着生,時に岩上生.

(文献1)

ヒラムシゴケ/平虫苔

Hyperphyscia crocata Kashiw., Bull. Ntl. Sci. Mus., Tokyo, ser. B, 11: 92-94 (1985); 文献1.

【異名等】ー

【文献1】原田浩.2016.  日本地衣類誌(4).Hyperphyscia ヒラムシゴケ属.Lichenology 15: 39–42.

執筆:原田浩,2021