#105 Parmotrema austrosinense (Zahlbr.) Hale

【外部形態等】地衣体は葉状,円形からやや不定形で径 5–10 cm.裂片は不規則に分枝し,幅 0.5–1.5 cm,丸みのある縁部は全縁で,著しく斜上し,その縁に沿って連続する線状の粉芽塊をつけると著しく波打ちフリル状となる.背面は鮮時概ね灰白色から灰緑色,平滑でわずかに光沢があるが,地衣体中央部では皺が寄ることがある.髄層は白色.腹面は中央部でほぼ黒色から暗褐色,周辺部では淡黄褐色からクリーム色,粉芽をつけた裂片の腹面はごく淡い褐色から類白色となる,偽根を地衣体中央部の腹面側に突出する部分に疎らにつけるが,周辺部では広く裸出する.偽根は単一で短く,長さ 1 mm以下.子器は国内では見つかっていない.(文献2,一部改変)

【化学成分】地衣体K+ 黄色,髄層K−,C+ 赤色,KC+ 赤色,P−.アトラノリン,レカノール酸を含む.(文献2)

【分布と生態】東北(岩手・宮城),関東(茨城・千葉・東京・神奈川)・中部(長野・静岡・愛知)・近畿(三重・滋賀・兵庫)・中国(広島)・四国(徳島),九州(福岡・長崎・大分・鹿児島).小笠原諸島.(臼庭他 2011).樹皮着生(84)・板(2)・岩上生(4)(かっこ内は検査標本数).主に暖温帯に分布する.関東地方の低地では,都市を除く広い範囲に見られる.明るい場所の樹幹・樹枝上と,岩上に生育する.暖温帯においては,ウメノキゴケP. tinctorumと並んで本属で最も普通に見られる種である.(文献2,一部改変)

植樹とともに広がっていると見られ,都市周辺でも盛んに個体数を増やしている.

ナミガタウメノキゴケ/波形梅木苔

Parmotrema austrosinense (Zahlbr.) Hale, Phytologia 28: 335 (1974); 中村他,校庭のコケ: 101 (2002); 文献2.

【異名等】Parmelia austrosinensis Zahlbr., Symb. Sin. 3: 192 (1930); 吉村,原色日本地衣植物図鑑: 84, pl. 16 (1974).

【文献1】吉村庸.1974.原色日本地衣植物図鑑.349 pp., 48 pls.保育社,大阪市.

【文献2】高橋奏恵・原田浩・吉村庸・吉川裕子.2015.  日本地衣類誌(3)ウメノキゴケ属Parmotrema.  Lichenology 14: 37–64.

執筆:原田浩,2021