#107 Parmotrema crinitum (Ach.) M.Choisy

【外部形態等】地衣体は円形からやや不定形の葉状で,径 5–15 cm.裂片は不規則に分枝し,幅 0.5–1.5 cm,縁部は波形で,裂芽とシリアをつける.シリアは疎らで,単一あるいは二叉分枝し,長さ 0.5–3 mm.背面は乾燥時淡褐色から淡灰褐色,湿潤時は淡灰色から灰緑色,平坦かやや皺が寄り,裂芽を密生し,マキラを生じることがある.裂芽は円筒状からサンゴ状で,高さ 0.5 mm以下,頂部にシリアを付けることがある.髄層は白色.腹面は黒色で,地衣体周辺部の狭い範囲で(2–3 mm)淡褐色から褐色.偽根は単一で,長さ 2 mm以下.(文献2)

千葉県に産する地衣類の中で最もよく似るウラグロマツゲゴケParmotrema ultralucens は,腹面がより黒いことで本種から区別されるというが,判別は非常に困難である.むき出しになった髄層にUVライトを当てるとウラグロマツゲゴケでは黄色い蛍光を発するので区別できる.

【化学成分】地衣体K+ 黄色,髄層K+ 黄色,C−,KC−,P+ 赤橙色.アトラノリン,スチクチン酸,コンスチクチン酸を含む.

【分布と生態】関東(茨城・千葉・神奈川)・中部(静岡・愛知)・近畿(和歌山・兵庫).樹皮着生(5)・岩上生(3)(かっこ内は検査標本数).(文献2)

チヂレマツゲゴケ/縮睫毛苔

Parmotrema crinitum (Ach.) M.Choisy, Bull. Mens. Soc. Linn. Soc. Bot. Lyon 21: 175 (1952); Elix, Flora of Australia 55: 145 (1994); Brodo et al., Lichens of North America: 494 (2001);文献2.

【異名等】Parmelia crinita Ach.; 吉村,原色日本地衣植物図鑑: 84, pl. 17 (1974); Krog & Swinscow, Bull. Br. Mus. (Nat. Hist.), 9: 173 (1981).

【文献1】吉村庸.1974.原色日本地衣植物図鑑.349 pp., 48 pls.保育社,大阪市.

【文献2】高橋奏恵・原田浩・吉村庸・吉川裕子.2015.  日本地衣類誌(3)ウメノキゴケ属Parmotrema.  Lichenology 14: 37–64.

執筆:原田浩,2021