#116 Parmotrema tinctorum (Nyl.) Hale

【外部形態等】地衣体は円形からやや不定形に広がる葉状で,径 5–15 (20) cm.裂片は不規則に分枝し,幅 1.0–1.5 mm,縁部は平臥するか,やや斜上し,通常は全縁で,わずかに波打ち,シリアを欠く.ただし,地衣体中央部や,時期によっては,細かく縮れることがある.背面は乾燥時灰褐色から淡灰褐色,湿潤時灰色から緑灰色,平滑でわずかに光沢があるが,発達した地衣体の中央部では皺が寄る.裂芽は背面に密生し,最初顆粒状で,後に円筒状,さらに分枝してサンゴ状となる,高さ 2 mm以下.髄層は白色.腹面は中央部では黒色で,地衣体周辺部では褐色から淡褐色,中央部では単一の偽根を疎らにつけるが,地衣体周辺部では広く裸出する.(文献2)

本種の子器はまれとされていたが,千葉県の郊外の環境が良く生育状態が良い場所では,しばしば有子器個体が見つかる.

暖温帯において最も普通に見られるウメノキゴケ属である.本属の裂芽をつける他の種は,シリアをつけることで区別できる.

【化学成分】地衣体+黄色,髄層K−,C+赤色,KC+ 赤色,P−.アトラノリン,レカノール酸を含む.(文献2)

【分布と生態】暖温帯に広く分布し関東以西に多く,日本海側ではまれ.

東北(秋田男鹿半島・岩手・山形飛島・宮城・福島)・関東(栃木・群馬・茨城・千葉・埼玉・東京・神奈川)・中部(新潟・長野・静岡・岐阜・愛知)・近畿(三重・滋賀・京都・大阪・奈良・和歌山・兵庫)・中国(鳥取・島根・岡山・広島・山口)・四国(香川・徳島・愛媛・高知)・九州(福岡・佐賀・長崎・大分・熊本・宮崎・鹿児島)・沖縄・伊豆諸島・小笠原諸島. 樹皮着生(188)・岩上生(41)(かっこ内は検査標本数).(文献2)

 

ウメノキゴケ/梅木苔

Parmotrema tinctorum (Nyl.) Hale, Phytologia 28: 339 (1974); 中村他,校庭のコケ: 100 (2002);文献2.

【異名等】Parmelia tinctorum Nyl.; 吉村,原色日本地衣植物図鑑: 83-84, pl. 16 (1974).

【文献1】吉村庸.1974.原色日本地衣植物図鑑.349 pp., 48 pls.保育社,大阪市.

【文献2】高橋奏恵・原田浩・吉村庸・吉川裕子.2015.  日本地衣類誌(3)ウメノキゴケ属Parmotrema.  Lichenology 14: 37–64.

執筆:原田浩,2021