#117 Parmotrema ultralucens (Krog) Hale

【外部形態等】地衣体は円形からやや不規則に広がる葉状で,径 3–10 cm.裂片は不規則に分枝し丸みがあり幅 0.5–1.5 mm,縁部は多少とも斜上し,通常はほぼ全縁だが,時に不規則に切れ込む.シリアは単一で,長さ0.5–2 mm.背面は淡褐色から淡灰褐色,平滑でやや光沢があり,マキラをつけることがある.裂芽は裂片背面縁部近くなどの盛り上がった箇所を中心に散生し,後,密生する.裂芽は円筒状からサンゴ状,先端にシリアをつけることがある.髄層は白色.腹面は黒色,地衣体周辺部の狭い範囲(2–3 mm)で黒褐色となり,偽根を密生するが,地衣体周辺部では裸出する.偽根は単一で,長さ 2 mm以下.(文献2)

本種によく似たチヂレマツゲゴケParmotrema crinitum は,腹面の縁近くの褐色(あるいは黒褐色)部分が広いことで区別できるとされるが,その境界は不明瞭で区別は困難である.しかし,むき出しにした髄層にUVライトを当てると,チヂレマツゲゴケでは黄色の蛍光を発しない(髄層にリケキサントンを欠く)ので容易に区別できる.

【化学成分】地衣体+黄色,髄層K+黄色のちに赤色,C−,KC+ 赤色,P+橙色.アトラノリン,サラチン酸,±リケキサントン (髄層UV+黄色)を含む.(文献2)

【分布と生態】関東(千葉)・中部(静岡)・四国(愛媛・高知)・九州(熊本・鹿児島).岩上生(6).(文献2)

ウラグロマツゲゴケ/裏黒睫毛苔

Parmotrema ultralucens (Krog) Hale, Mycotaxon 1: 108 (1974); Elix, Flora of Australia 55: 160 (1994);文献2.

【異名等】Parmelia ultralucens Krog; 吉村,原色日本地衣植物図鑑: 85 (1974); Krog & Swinscow, Bull. Br. Mus. (Nat. Hist.), 9: 221-222 (1981).

【文献1】吉村庸.1974.原色日本地衣植物図鑑.349 pp., 48 pls.保育社,大阪市.

【文献2】高橋奏恵・原田浩・吉村庸・吉川裕子.2015.  日本地衣類誌(3)ウメノキゴケ属Parmotrema.  Lichenology 14: 37–64.

執筆:原田浩,2021