#120 Phaeophyscia hirtuosa (Kremp.) Essl.

【外部形態等】地衣体は葉状,直径3 – 10 cm.裂片は類線形で幅0.5 – 3.5 mm,二叉あるいは羽状,または不規則に分枝し,はじめ互いにやや遊離するが,後に概ね接し,わずかに重なり合い,更に屋根瓦状に重なり合い,多少とも緩く基物に付着する.背面は,末端の裂片ではやや窪むが,地衣体中央部では概ね平坦,マキラを欠き平滑,灰白色から灰緑色,通常は粉霜を欠くが,時に比較的若い裂片ではわずかに粉霜を生じ,粉芽・裂芽を欠く.髄層は白色.腹面は黒色,黒色(裂片先端部ではしばしば淡色)で単一の偽根(長さ0.5 – 5 mm)を密生する.明らかに裂片の縁から白か黒色の長さ0.1 – 0.5 mmのシリアを生じ,これが水平に伸び,ときに斜上する.子器は普通に生じ,直径 1 – 4 mm,縁部は全縁,後に多少とも円鋸歯状になることがあり,淡色の長さ0.1 – 0.3 mmのシリア(水平あるいは斜上)を生じ,果托基部には偽根(水平ないし下方を向く)を生じる.子器盤は赤褐色,粉霜を欠く.上皮層・下皮層とも異型菌糸組織.子嚢胞子は20 – 25 × 8 – 12 µm.(文献1,一部改変)

子器にシリアを生じるのが本種の特徴とされるが,本属Phaeophyscia の子器の下の方(果托基部)には偽根を生じ,これをシリアと間違えやすい.子器盤の周り(果托上部)に生じるのがシリアである(文献1を参照).

【化学成分】地衣体背面K−;髄層K−.(文献1)

【分布と生態】国内の分布:北海道,青森・岩手・山形・福島,群馬,新潟・長野・愛知,三重,広島.(文献1)
生態:国内の冷温帯を中心に広く分布するものと思われるが,確実な記録は必ずしも多くない.主として落葉広葉樹林において,樹皮着生する.

シラゲムカデゴケ/白毛百足苔

Phaeophyscia hirtuosa (Kremp.) Essl., Mycotaxon 7: 304 (1978); 文献1.

【異名等】≡Physcia hirtuosa Kremp.; Kashiwadani, Ginkgoana (3): 45-47, Pls. 1 (Fig. 4), 4 (Fig. 7) (1975).

【文献1】原田浩.2016.  日本地衣類誌(6).Phaeophyscia クロウラムカデゴケ属.Lichenology 15: 47–59.

執筆:原田浩,2021