#134 Physcia orientalis Kashiw.

【外部形態等】地衣体は葉状(鱗片状),直径 3 – 8 cm,時に密集し大きなマットを形成する.裂片は概ね線形で幅 1 – 2.5 (– 4) mm,羽状あるいは不規則に分枝し,ごく初期は互いに離れるが,すぐに互いに概ね接し,間もなくわずかに屋根瓦状に重なる.裂片は概ね基物に圧着する.背面は概ね平坦(ある いはごくわずかに突出),灰白色,マキラを欠く.粉芽塊は,側枝先端あるいは裂片縁部に生じ,後に頭状に発達する,粉芽塊はしばしば裂片中央部にも点在する.裂片腹面は淡色で,淡色の単一の偽根を散生する.子器は普通に生じ,直径 1 – 2 mm,縁部は全縁,果托は偽根を欠く.子器盤は赤褐色,粉霜を欠く.上皮層・下皮層とも異型菌糸組織.子嚢胞子は  18 – 22 × 7 – 9 µm.(文献1,一部改変)

コフキヂリナリアDirinaria applanata は本種と間違えやすいが,粉芽塊が必ず裂片の中央ににも位置することで区別できる.また,生育状態をルーペで観察すると,本種では時に類白色の偽根が裂片からはみ出して見えることがあるが,コフキヂリナリア(腹面は黒色のうえ,偽根が痕跡的)では決してそのようなことはない.

【化学成分】地衣体背面 K +黄色;髄層 K −.(文献1)

【分布と生態】国内の分布:北海道,青森・秋田・山形,茨城・千葉・東京,長野・山梨・静岡・愛知,滋賀・京都・和歌山・奈良・兵庫,岡山・鳥取・島根(隠岐諸島を含む)・山口・広島,香川・徳島・愛媛・高知.宮崎・鹿児島,沖縄(沖縄本島).

生態:暖温帯においてはごく普通に樹皮上に見られる.時に岩上にも生育する.(文献1)

ナミムカデゴケ/並百足苔

Physcia orientalis Kashiw., Mem. Ntl. Sci. Mus., Tokyo (18): 101-102, 103 (Fig. 1) (1985);文献1

【異名等】=Physcia tribacoides auct. non Nyl.; Kashiwadani, Ginkgoana (3) 38-39, Pl. 4 (2) (1975).

【文献1】原田浩.2016.  日本地衣類誌(7).Physcia s.str. 狭義ムカデゴケ属.Lichenology 15: 105–112.

執筆:原田浩,2021