#139 Physciella melanchra (Hue) Essl.

【外部形態等】地衣体は葉状(鱗片状),直径0.5 – 4 cm.裂片は線形で幅0.3 – 1.2 mm,二叉あるいは羽状,不規則に分枝し,最初は互いに遊離していることが多いが,後に地衣体中央部や他の地衣体と接している箇所では,屋根瓦状に重なる.やや緩く圧着する.背面は平坦かわずかに突出し,灰白色かやや褐色を帯び,マキラを欠き,縁が隆起したクレーター状の粉芽塊を裂片中央部に生じる.腹面は淡色で,淡色(時にわずかに暗化する)の単一の偽根(長さ1.5 mm以下)を散生し,裂片縁部ではシリア状に伸びるものが多い.子器はややまれ,直径1 – 2 mm,縁部は全縁かわずかに円鋸歯状,果托は偽根を欠く.子器盤は赤褐色で粉霜を欠く.子嚢胞子は7 – 8 × 18 – 21 µm.上皮層は異型菌糸組織,下皮層は繊維菌糸組織.(文献1)

【化学成分】地衣体背面K−;髄層K−.(文献1)

【分布と生態】国内の分布:北海道(低地),青森・秋田・福島,茨城・栃木・埼玉・千葉・東京・神奈川,新潟・富山・石川・長野・静岡・愛知,京都・兵庫・和歌山,島根・岡山・広島・山口,徳島・香川(小豆島)・愛媛・高知,福岡・佐賀・長崎・大分・宮崎.

生態:少なくとも暖温帯において,都市周辺も含む開けた場所の樹幹,コンクリート上に最も普通に見られるムカデゴケ類の一つである.海岸の岩上(灰色帯)にも出現し,地衣体背面は褐色を帯びることが多い.(文献1,一部改変,データを追加)

ムカデコゴケ/百足小苔

Physciella melanchra (Hue) Essl., Mycologia 78: 95 (1986).;文献1

【異名等】=Physcia melanchra Hue, N. Arch. Mus. Hist., ser. 4, 2: 75 (1900); Kashiwadani, Ginkgoana (3): 30--32, Pl. 3 (5) (1975).

【文献1】原田浩.2016.  日本地衣類誌(5).Physciella ムカデコゴケ属.Lichenology 15: 43–46.

執筆:原田浩,2021