#154 Anisomeridium yoshimurae H.Harada

 

樹皮着生の痂状地衣.被子器は黒く,地衣体から突出する点では,Pyrenulaサネゴケ属と同様だが,地衣体が白っぽく,UV+黄色になるので,暖温帯に分布するほとんどのサネゴケ属からは区別できる.本属であることを確実に同定するには,子器の縦断切片を作り,子嚢層内菌糸系が分枝癒合し網目状となること,子嚢胞子が2室(あるいは平行4室)であることなどを確認する必要がある.Anisomeridium ubianum オオニセゴマゴケと同様に樹皮着生性で,地衣体が樹皮内生で,孔口が被子器の側方に生じるが,本種は地衣体がI−で子嚢胞子が細いことで,地衣体がI+黄色で,子嚢胞子の幅9-13 µmの前者とは区別できる.

 

【外部形態】目立つ基物上の地衣体はなく,白っぽく,光沢はない(一部でわずかに光沢がある).他の地衣体と接しない部分では,顕著なプロタルスはないが,他の地衣体と接する部分では幅0.5-1mmの明瞭な黒色の線を生じる.被子器は集合せず,基部のみ埋もれ,突出し,輪郭はほぼ円形,概ね半球形,直径 0.25 – 0.5 mm,ほぼ黒色,わずかに光沢があり,側方に孔口がある.孔口は通常は目立たないが,ときに白っぽくわずかに乳頭状に突出.粉子器はほぼ黒色で点状,いくらか突出し,直径はたいてい 0.1 – 0.15 mm.

地衣体はUV−.

【内部形態】地衣体は樹皮内生,明瞭な菌糸組織を欠き,菌糸は繊維状で,直径が概ね 1 – 1.5 μm(菌糸壁を含む),分枝癒合する.共生藻はスミレモ類(表面から深さ約 50 μmに分布),細胞は長さ 8 – 15 μm,幅 6 – 9 μm.外殻は上部でよく発達し,厚さ 25 – 50 μm,上部では果殻と融合,被子器の基部まで伸び,下方では欠き,基物の樹皮片を含み,ごく暗い暗褐色.果殻は,外殻と接する側方では褐色を帯び,厚さ 15 μmまで,下方では無色,厚さ 10 – 20 μm.ヒポテシウムは不明.子嚢下層は中央で厚さ 80 μm.子嚢層は油滴を欠く.子嚢層内菌糸系は分枝癒合し網目状となり,直径 0.5 – 1 μm(菌糸内腔),ゼラチン質(I−)に埋もれる.子嚢は棍棒状で 90 × 15 μm,顕著なアピカルプラグがあり,浅く丸いオキュラーチャンバー があり,I−(内容物は橙色を帯びる).子嚢胞子は1子嚢中に8個生じ,23 – 28 × 7 – 9.5 μm,無色,2室,隔壁は中央を外れ末端側の細胞が明らかに大きく,薄壁(通常厚さ 1 μm以下),表面に明らかな凹凸はなく,明らかなペリスポアを欠く.大粉子は 11 – 13 × 5 – 6 μm.

(文献1を一部改変)

【化学成分】-

【分布と生態】高知県の暖温帯上部で比較的明るい森林の落葉広葉樹樹幹上で発見された(文献1).

ヨシムラニセゴマゴケ/吉村偽胡麻苔

Anisomeridium yoshimurae H.Harada

【異名等】

【文献1】原田 浩.2019. 日本産被果地衣類分類ノート(11).新種,ヨシムラニセゴマゴケAnisomeridium yoshimurae./ Lichenology 18(1): 9‒13.

執筆:原田浩,2021