#174 Cladonia humilis (With.) J.R.Laundon

ハナゴケ属の中では,盃が大きく,ジョウゴ形となることで特徴づけられる.形のよく似たアカミゴケC. pleurotaなど赤実群の種は,ウスニン酸を含み多少とも黄色を帯びること,子器が赤色であることで異なる.本種やジョウゴゴケC. chlorophaeaなどの近縁種を含むジョウゴゴケ類の中では,子柄表面が多少とも顆粒状となること,フマールプロトセトラール酸とアトラノリンを含むことで本種は特徴づけられる.暖温帯に最も普通に出現するハナゴケ属である.

 

【外部形態】樹状の子柄は顕著な盃を生じ,じょうご形で,高さ3mm~1cm程度,基部では皮層がほとんど連続することはあるが,外側の表面は概ね顆粒に覆われ上部では粉芽化する.盃の内側も,顆粒で覆われる.しばしば粉芽・顆粒の多くが脱落し,内髄を裸出することもある.盃の縁ははじめ全縁だが,縁からしばしば複数の小突起が伸び,先端に暗褐色の粉子器を生じる.更にこれのうち1~3個が,褐色の子器となり,これが大きくなると盃はいびつになり,更には盃であることが分かりにくくなる.基本葉体は顕著な鱗片状で,子柄を生じるころには直径3~5mmに達するが,それぞれの裂片は比較的大きく,幅2mmに達することもあり,多少とも先端がめくれ上がり白い腹面が見える.

【化学成分】アトラノリン,フマールプロトセトラール酸;子柄K+黄色,P+橙赤色.(文献1)

【分布と生態】丘陵帯(暖温帯)から山地帯(冷温帯)まで普通に見られる.千葉県では最もよく見られるハナゴケ属である.暖温帯の千葉県では,切通し(土上)や,石造物にたまった土の上,日当たりのよい植え込みの根元に見られる.

ヒメジョウゴゴケ/姫漏斗苔

Cladonia humilis (With.) J.R.Laundon

【異名等】Cladonia conistea (Delise) Asah.(文献1)

【文献1】吉村庸.1974.原色日本地衣植物図鑑.349 pp., 48 pls.保育社,大阪市.

執筆:原田浩,2023