#214 Graphis proserpens Vain. | |||||
暖温帯に見られるモジゴケの仲間では,ラビア(果殻)の表面に筋が並行して走ることで特徴づけられる.ラビア表面に筋があるのはこの他に,Graphis dupaxana クロセスジモジゴケが知られるが,子器の横断面を観察すると,ラビアの下部また子嚢層よりも下方にかけて全体が黒色化することで,本種とは容易に区別できる.
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【外部形態】 地衣体は概ね灰緑色で連続し,平滑,光沢はない.子器(リレラ)は,地衣体上に顕著に突出し,基部はくびれ,多少とも分枝する.ラビア(果殻)の表面には長軸に沿って,平行する浅い溝を生じ,黒色で,溝を中心に白色の粉霜を多少ともかぶる.対となるラビアは互いにほぼ接するかそれに近い状態で,子器盤は見えないかわずかにのぞく.
【内部形態】(子器横切片)子器壁の上部には,黒化した部分(明らかに果殻)が複数あって,下方は伸びるとともに狭くなり,黒色の部分の互いの間には淡色の層を挟む.子器壁の下方は,黄褐色から褐色,あるいは多少とも暗褐色(部分的にほぼ無色)で,子嚢層の下方で連続するとともに,特に子嚢層の下方で厚くなる.子嚢層は油滴を欠く.子嚢胞子は平行多室,細胞はレンズ状で8~12室,28-38.5×7µm(文献1).
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【生態】林内から林縁の樹皮に着生. 【分布】主に暖温帯,ときに冷温帯にまで広く分布する.北海道~九州(文献1)
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セスジモジゴケ/背筋文字苔 Graphis proserpens Vain. |
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【文献1】Nakanishi M. 1966/ Taxonomical studies on the family Graphidaceae of Japan/ J. Sci. Hiroshima Univ., ser. B, div. 2 (Bot.), 11 (1): 51-126, pls. I-V. |
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執筆,原田浩,2024 | |||||
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