#220 Gyalidea kawanae H.Harada & Vězda

本属として日本で初めて報告されたコザラゴケ(Gyalidea japonica)が明るい場所に生育するのとは対照的に本種は森林性の種と言っても良いだろう.地衣体には,コザラゴケモドキ(G. pacifica)とともにゴニオシスタンジアを生じるが,子嚢胞子が亜石垣状多室であることから,平行多室の本種とは異なる.

 こういった形状の痂状地衣の同定には,子器の縦断切片の観察(GAW標品)と,子嚢層(子嚢)のヨード反応の観察が必須である.

 

【外部形態】 地衣体は痂状,連続し,薄く,淡灰緑色,光沢はなく,ゴニオシスタンジアが散在する.ゴニオシスタンジアはカップ状で,直径0.15~0.3mm,しばしばゴニオシストが堆積し半球形に盛り上がる.目立つプロタルスを欠く.裸子器は直径0.35~1mm,無柄,基部はくびれる.子器盤ははじめ窪むが,間もなく平坦となり,淡褐色,はじめ光沢があるが,後に光沢を欠き半透明となる.縁部は厚さ0.05mm,暗褐色からほぼ黒色.(文献1を改変)

【内部形態】共生藻は単細胞性の緑藻.ゴニオシストは直径10~25µm,共生藻ははじめ1細胞,後に5~7細胞となり,菌糸で囲まれる.子器はレキデア型(あるいはビアトラ型).果殻の側方と下方で厚さ70~110µm,上部と側方の最外層で褐色,内部はほぼ無色,菌糸壁同志が癒合し基質化し,これに繊維状の菌糸細胞内腔が概ね噴水状に配列する.ヒポテシウム,子嚢下層とも無色.子嚢層は最上部で多少とも褐色,残りは無色,厚さ70~75µm.側糸は概ね単一,先端は棍棒状に膨れる(径1.5~2µm).子嚢胞子は1子嚢中に(5個程度~)8個生じ,15~24×5~8µm,楕円体で,平行多室(隔壁は概ね5),無色,薄壁.子嚢層(子嚢を含む)は非アミロイド(I−).(文献1を改変)

【生態】暖温帯の,わずかに明るい湿った林内の岩上に生育.

【分布】千葉県.

カワナコザラゴケ/川名小皿苔

Gyalidea kawanae H.Harada & Vězda

【異名等】

【文献1】Harada H. & Vězda A. 1999/ Gyalidea kawanae (lichenized Ascomycota, Solorinellaceae) sp. nov.from Chiba-ken, central Japan, with notes on Gyalidea pacifica./ Nat. Hist. Res. 5(2) 57-62.

執筆:原田浩,2023