#243 Lecanora iseana Räsänen

 

チャシブゴケ属Lecanoraの中で,本種は以下の形質により特徴づけられる: 樹皮着生,地衣体は連続し多少とも区画化し,多少とも褐色を帯びた灰緑色,子器は比較的大きく,明らかに突出し,子器盤は暗赤褐色~黒褐色,果托にシュウ酸カルシウムの大きな結晶を含み,ヒポテシウムは淡褐色.

 

類似種に,ヒポテシウムが淡褐色の種はないので,この形質を確認するとよい.

 

【外部形態】地衣体は痂状,連続し,概ね平滑,平坦,多少とも区画化し,褐色をおびた灰緑色.地衣体周辺のプロタルスは類白色の繊維状となる.

子器はレカノラ型,直径2 mm以下,明らかに突出し,基部は明らかにくびれる.子器盤は赤褐色から黒褐色,ほぼ平坦からわずかに突出し,粉霜を欠く.縁部は子器盤より突出し,薄く,地衣体と同色.

【内部形態】果托に顕著なシュウ酸カルシウム結晶を含む.ヒポテシウムは淡褐色.子嚢上層に顆粒を欠く.子嚢胞子は1子嚢中に8個生じ,9-14 × 5-8 µm(文献1)

【化学成分】アトラノリン,ゼオリン,未同定物質(文献1)

【生態】樹皮着生

【分布】本州(秋田~三重),暖温帯・冷温帯(文献1より).

イセチャシブゴケ/伊勢茶渋苔(文献2)

Lecanora iseana Räsänen, J. Jpn. Bot. 16: 91 (1940).

【異名等】-

【文献1】 Miyawaki H. 1988./ Studies on the Lecanora subfusca group in Japan./ J. Hattori Bot. Lab. (64): 271-326.

【文献2】宮脇博巳・原田浩.2016./ 日本産チャシブゴケ属(Lecanora)の新和名./ Lichenology 15: 123-125.

執筆,原田浩,2024