#244 Lecanora japonica Müll.Arg.

 

チャシブゴケ属Lecanoraの中で,本種は以下の形質により特徴づけられる: 樹皮着生,地衣体は概ね連続し,多少とも区画化し,子器はやや小さく,明らかに突出し,子器盤は赤褐色,果托にシュウ酸カルシウムの大きな結晶を欠き,子嚢上層に顆粒を欠き,微細な油滴を生じ,子嚢胞子は1子嚢中に8か16個生じる.

 

地衣類において子嚢胞子を1子嚢中に8個生じるのが普通で,それはチャシブゴケ属でも同じなのだが,本種はしばしば16個の子嚢胞子を生じることが大きな特徴となっている.

 

【外部形態】地衣体は痂状,連続し,多少とも区画化し,灰白色から灰緑色で,地衣体周辺のプロタルスは類白色の多少とも繊維状となる.

子器はレカノラ型,直径1 mm以下,明らかに突出し,基部は明らかにくびれる.子器盤は赤褐色,多少とも窪むかほぼ平坦,粉霜を欠く.縁部は子器盤より顕著に突出し,地衣体と同色.

【内部形態】果托に顕著なシュウ酸カルシウム結晶を欠く.子嚢上層に顆粒を欠き,微細な油滴を生じる.子嚢胞子は1子嚢中に8か16個生じ,12-16 × 6-8 µm(文献1)

【化学成分】アトラノリン,未同定物質(文献1)

【生態】樹皮着生

【分布】北海道・本州,暖温帯・冷温帯付近(文献1より).

ホウネンチャシブゴケ/豊年茶渋苔(文献2)

Lecanora japonica Müll.Arg., Flora 62: 482 (1879).

【異名等】Lecanora subrubra Hue, Ann. Mycol. 13: 92 (1915)(文献1)

【文献1】 Miyawaki H. 1988./ Studies on the Lecanora subfusca group in Japan./ J. Hattori Bot. Lab. (64): 271-326.

【文献2】宮脇博巳・原田浩.2016./ 日本産チャシブゴケ属(Lecanora)の新和名./ Lichenology 15: 123-125.

執筆,原田浩,2024