#279 Myelochroa hayachinensis (Kurok.) Elix & Hale

小形の葉状地衣.裂片は丸く,不規則に分枝し,基物に圧着する.背面は灰緑色,多少とも凹凸があり,パスチュールを生じるが,壊れやすい.裂片間の脇にごく短いシリアを生じる.腹面は概ね暗褐色からほぼ黒色で,ほとんど全体にわたり概ね単一の短めの偽根を生じる.髄層は淡黄色.髄層には(生物顕微鏡下),チョロギ細胞と呼ばれる数珠状の菌糸がある.髄層にガルビン酸を含む,P+橙色.

 髄層にチョロギ細胞があり,ガルビン酸を含むことで,チョロギウメノキゴケ(M. galbina)に似る.裂片の形状もこれに似るが,本種のほうが若干幅が広い傾向がある.チョロギウメノキゴケはパスチュールを欠くので容易に区別できる.

 暖温帯の千葉県においては,本種のようにパスチュールをつけるウメノキゴケ科は,ヒカゲウチキウメノキゴケ(M. leucotyliza),コナヒメウメノキゴケ(Parmelinopsis spumosa),ゴンゲンゴケ(Hypotrachyna osseoalba)などがある.裂片の形,色調などが本種とは異なるが,いずれもチョロギ細胞を欠き,髄層はP−である.

 

【外部形態】(準備中)

【化学成分】アトラノリン,ゼオリン,ガルビン酸,トリテルペン(文献1)

【分布と生態】本州・四国,八丈島.丘陵帯(暖温帯)・山地帯の樹幹上に生育する.

 

ハヤチネウメノキゴケ/早池峰梅木苔

Myelochroa hayachinensis (Kurok.) Elix & Hale

【異名等】Parmelia hayachineisis Kurok.(文献1)

【文献1】吉村庸.1974.原色日本地衣植物図鑑.349 pp., 48 pls.保育社,大阪市.

執筆:原田浩,2021