#319 Porina flavonigra H.Harada | |||||
岩上生ならびに樹皮着生マルゴケ属の,顕著な果托を欠く種の中では,岩上生で,被子器は黒色でほぼ球形,被子器壁(切片)が黒色と黄褐色の2色からなり,決して紫色を帯びず,子嚢胞子は平行6ないし8室で中くらいの大きさ[(25 –) 27 – 39 (– 41) × 4 – 5.5 μm]であることによって特徴づけられる.本種によく似たP. guentheri クロマルゴケは,被子器壁(切片)が紫色を帯びた黒色で,黄褐色を帯びないことで異なる.
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【外部形態】地衣体は痂状,薄く,連続し,概ね平滑で,裂芽状突起を欠き,小いぼ状突起で覆われることはなく,光沢はなく,紫がかった灰色,灰色,灰褐色,時に地衣体に着生する藻類やシアノバクテリアによって暗色に見える. 被子器は顕著な果托がなく,半球形からほぼ球形で,直径0.2 – 0.5 mm,基部は顕著にくびれ境界は明瞭で,表面は黒色で僅かに光沢があり,平滑,頂部は丸く,孔口は目立たない. 【内部形態】地衣体は厚さ10 – 40 μm,皮層を欠き,異型菌糸組織となり,シュウ酸カルシウム結晶を欠く.被子器壁はシュウ酸カルシウム結晶を欠く.果托は完全に外殻化し目立たない.外殻は,果殻に圧着し子器基部あるいは基物にまで到達し,側方には広がらず,子器側方では厚さ25 – 40 μm,黒色(決して紫色を帯びない)の部分と黄褐色の部分からなり,その割合は様々な要因で変化し,菌糸組織化し,菌糸壁が互いに固く癒合し基質化する.果殻は黒色から黄褐色,側方と下部では厚さ15 – 25 μm,上方ではほぼ黒色となり外殻と癒合し全体で厚さ30 – 50 μm.子嚢層は多少とも上下に扁平.側糸はほぼ単一.子嚢胞子は(25 –) 27 – 39 (– 41) × 4 – 5.5 μm,無色,平行6 – 8室(隔壁は5 – 7),薄壁,顕著な外膜を欠く. (文献1を改変) 【化学成分】記録なし |
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【分布と生態】千葉県以西(千葉県,静岡県,三重県,和歌山県,岡山県,高知県,宮崎県,鹿児島県)から報告がある;森林でおおわれた,渓谷などの,岩上に生育する.(文献1) |
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クロマルゴケモドキ/黒丸苔擬 Porina flavonigra H.Harada |
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【異名等】― |
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【文献1】Harada H. 2015./ Saxicolous and corticolous species of Porina (lichenized Ascomycota, Porinaceae) of Japan (part 1)./ Lichenology 14(1): 1-26. |
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執筆:原田浩,2023 | |||||
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