#320 Porina guentheri (Flotow) Zahlbr.

 

水辺と周辺の岩上に生育する被果地衣類の中で,以下の形質で特徴づけられる.地衣体は連続し多少とも褐色を帯びる.被子器はほぼ黒色で,半球形からほぼ球形(直径0.3~0.5mm)で基部がくびれる.被子器壁(切片GAW標品)は橙黄色を帯びず,子嚢層には側糸があって,子嚢の頂部に顕著な飛行はなく,子嚢胞子は並行6~8(~9)室.

 

【外部形態】地衣体は痂状,岩上生,連続するか割れ,薄く,まれに剥がれ落ち,一般に平滑で光沢はなく,紫灰色,紫がかった灰褐色,灰色,灰褐色など,時に表面に付着する藻類・ラン藻などにより暗色となり,顕著なプロタルスを欠き,裂芽・粉芽を欠く.被子器は顕著な果托を欠き,半球形から概ね球形で,直径 0.15~0.4 mm,基部はくびれ境界は鋭く,全体が黒色,平滑,わずかに光沢があり,頂部は丸く,先端の孔口(ときに乳頭状)周辺はわずかに窪む.

【内部形態】地衣体は明瞭な下菌糸と皮層を欠き,厚さ15~40 μm,多少とも異形菌糸組織,シュウ酸カルシウム結晶を欠く. 被子器壁はシュウ酸カルシウム結晶を欠く.外殻は果殻に圧着し果殻の基部の高さまで(あるいは基物まで)達し,側方に広がアr図,果殻側方で厚さ20~45 μm,ほぼ黒色,あるいは褐色を帯び,部分的に褐色がかり,あるいは多少とも紫かワインレッドを帯び,互いに著しく合着した菌糸からなり,菌糸内腔は線形で,幅はたいてい 1~2 μm,様々な方向に向く.果殻はふつう無色,時に暗色で(色彩は外殻と同系でより淡く),側方と基部で厚さ(10~)15~35(~40)μm,ほぼ黒色で,上方では外殻と融合する.子嚢層はほぼ球形,高さ 170~200μm,幅 150~200 μm.周糸は長さ 10~25 μm.側糸は分枝しない.子嚢は棍棒状で,80~110 × 約 15 μm,顕著な頂部の肥厚を欠く.子嚢胞子は1子嚢中に8個生じ,27~42 ×(5.5~)6~8 μm,並行6~8(~9)室,無色,薄壁,時に顕著なペリスポアがある.(文献1を一部改変)

【化学成分】-

【分布と生態】千葉・静岡・三重・高知・宮崎から記録がある.暖温帯の主に森林内の岩上,時に半淡水環境に出現する.

クロマルゴケ/黒丸苔

Porina guentheri (Flotow) Zahlbr.

【異名等】

【文献1】Harada H. 2016. Saxicolous and corticolous species of Porina (lichenized Ascomycota, Porinaceae) of Japan (part 2). Lichenology 14(2): 91-118.

執筆:原田浩,2021