#321 Porina hirsuta Aptroot & K.H.Moon

樹皮着生マルゴケ属の中で,明らかな果托を欠くこと,被子器が黒っぽくほぼ球形で,被子器壁(切片)が黄褐色を帯びること,子嚢胞子が平行6室であることで特徴づけられる.子器の上部に毛状の突起を生じることも特徴の一つだが,極めて脱落しやすいものなので,この形質に頼ってはいけない.

 

【外部形態】地衣体は痂状,薄く,連続し,概ね平滑で,紫がかった褐色から灰褐色,あるいは灰色,灰褐色だが,しばしば着生の藻類やシアノバクテリアによって暗色となる.子器へ顕著な果托を欠き,ときに基部が地衣体で覆われる程度で,半球形からほぼ球形,直径0.15 – 0.35 (– 0.4) mm,基部の境界は明瞭で,ときにくびれ,褐色がかった黒からほぼ黒色,僅かに光沢があり,頂部は丸く,孔口部は時にわずかに乳頭状に突起する.子器上部に毛状の突起を生じることはあるが,極めて脱落しやすく,これを欠く場合が多い.

【内部形態】地衣体は厚さ10 – 40 μm,シュウ酸カルシウム結晶を欠く.被子器壁はシュウ酸カルシウム結晶を欠く.外殻は果殻に圧着し基部まで到達し,ふつう全体が黄色を帯びた暗褐色だが,ときに黒色の部分が一部あるいは大部分を占める.子嚢層はほぼ球形.側糸は単一.子嚢は円筒形で約100 × 7 – 10 μm,先端部に子嚢壁の顕著な肥厚はない.子嚢胞子は21 – 31 × (3 –) 4 – 5.5 (– 6.5) μm,平行6室(隔壁は5),無色,細胞壁は薄く,顕著な外膜を欠く.(文献1を改変)

【化学成分】-

【分布と生態】関東地方の低地;樹皮着生.(文献1)

ヒメクロマルゴケ/姫黒丸苔

Porina hirsuta Aptroot & K.H.Moon.

【異名等】

【文献1】Harada H. 2016/ Saxicolous and corticolous species of Porina (lichenized Ascomycota, Porinaceae) of Japan (part 2)./ Lichenology 14(2): 91-118.

執筆:原田浩,2023