#324 Porina tosaensis H.Harada

岩上生マルゴケ属の,顕著な果托を欠く種の中では,子器がほぼ黒色で半球形,被子器壁(切片)はごく暗い褐色からほぼ黒色(紫色と黄褐色を帯びない),子嚢胞子は平行6室で,比較的小さい(21 – 27 × 4 – 5 μm)ことによって特徴づけられる.

 

【外部形態】地衣体は痂状,連続し,薄く,平滑で,多少とも半ゼラチン質で,光沢はなく,緑褐色から褐色を帯びた緑色,裂芽状突起はない.

被子器は顕著な果托を欠き,半球形で直径0.45 – 0.85 mm,基部は広がらず,基部付近に小いぼ状突起を生じ,ほぼ黒色で,頂部は丸く,孔口を中心として暗紫褐色からほぼ黒色化する.

【内部形態】地衣体は厚さ15 – 25 (– 40) μm,時に皮層を生じる.果托は目立たず,シュウ酸カルシウム結晶を欠き,上部では外殻と化し,下部は不明瞭.外殻は果殻に圧着し,上部で果殻に圧着し,子器基部への中間あるいは基部まで達し,側方には広がらず,子器側方では厚さ10 – 15 μm,きに子器中部まで圧着し,わずかに側方に広がり基部に達し,ごく暗い褐色からほぼ黒色,多少とも異型菌糸組織化する.果殻は最上部でごく暗い褐色からほぼ黒色,他は灰色から灰褐色,側方と基部で厚さ5 – 15 μm.子嚢層はほぼ球形.側糸はほぼ単一.子嚢は棍棒状から紡錘形,約 75 × 10 – 15 μm,全体が薄壁で,頂部に目立った肥厚はない.子嚢胞子は 21 – 27 × 4 – 5 μm,無色,平行6室(隔壁は5),薄壁,顕著な外膜を欠く. (文献1を改変)

【化学成分】記録なし

【分布と生態】紀伊半島以西(和歌山県,高知県);暖温帯の森林周辺において,斜面から湧き出る水流に半ば水没した岩上で見つかった.(文献1)

コゲチャマルゴケ/焦茶丸苔

Porina tosaensis H.Harada

【異名等】

【文献1】Harada H. 2015./ Saxicolous and corticolous species of Porina (lichenized Ascomycota, Porinaceae) of Japan (part 1)./ Lichenology 14(1): 1-26.

執筆:原田浩,2023