#326 Porina yoshimurae H.Harada

岩上生マルゴケ属の,顕著な果托を生じる種の中では,地衣体にしばしば裂芽状突起を生じ,子嚢胞子は亜石垣状多室(横隔壁は6 – 11,縦隔壁は1程度)で比較的大きく(31 – 70 × 9 – 14 μm),顕著な外膜があることによって特徴づけられる.

 

【外部形態】地衣体は痂状,連続し,概ね平滑から部分的にわずかにいぼ状突起を生じ,光沢があり,灰色を帯びた黄褐色,しばしば裂芽状突起(直径約0.02mm)を生じる.

被子器は顕著な果托があり,半球形で直径0.45 – 0.85 mm,基部は広がらず,基部付近に小いぼ状突起を生じ,頂部は丸く,孔口を中心として暗紫褐色からほぼ黒色化する.

【内部形態】地衣体は厚さ15 – 25 (– 40) μm,時に皮層を生じる.果托は顕著で,シュウ酸カルシウム結晶の連続する厚い層を生じる.外殻は上部で果殻に圧着し,ときに子器中部まで圧着し,わずかに側方に広がり基部に達し,暗いか極めてくらい紫褐色で,ときに紫色を帯びた橙褐色で,菌糸組織化する.果殻は子器の側方では無色から橙褐色で厚さ10 – 15 μm,上方では橙褐色で外殻と癒合し全体で厚さ50 – 100 μm.子嚢層は多少とも上下に扁平.側糸はほぼ単一.子嚢胞子は31 – 70 × 9 – 14 μm,無色,亜石垣状多室(横隔壁は6 – 11,縦隔壁は1程度),薄壁,顕著な外膜(厚さ2 – 5 μm)を生じる. (文献1を改変)

【化学成分】記録なし

【分布と生態】関東以西(埼玉県,静岡県,高知県,宮崎県,鹿児島県から報告がある);森林でおおわれた渓谷の岩上で見つかった.(文献1)

ヨシムラマルゴケ/吉村丸苔

Porina yoshimurae H.Harada

【異名等】

【文献1】Harada H. 2015./ Saxicolous and corticolous species of Porina (lichenized Ascomycota, Porinaceae) of Japan (part 1)./ Lichenology 14(1): 1-26.

執筆:原田浩,2023