#332 Psorogleana japonica H.Harada

 

暖温帯の森林内の細流の水辺の岩上で確認された被果地衣類.被子器が顕著に突出し,比較的淡色であることと,地衣体が鮮緑色の細かな顆粒(ゴニオシスト)からなることにより,他の種から区別できる.目立たない種.

 

【外部形態】地衣体は痂状,鮮時は灰色を帯びた鮮緑色,基物表面に広がり,直径 10 cm程度まで大きくなることがあり,粉末状,ゴニオシストからなるが,時に連続して見える.被子器は基部のみが基物に埋もれ,楕円形からほぼ球形,洋ナシ形,直径0.2~0.4 mm,淡橙褐色,時に多少とも暗い褐色となっる.粉子器は未見.

【内部形態】地衣体を構成するゴニオシストの細胞は,たいてい直径が10~20 μm,ゆるく集合し,時に短い鎖状となる.その皮層は無色,厚さ 1~2 μm,1細胞層からなり,表面にパピラを生じる.被子器は幅 250~350 μm,高さ 260~330 μm.果殻は下部と内部では無色,外層上部では橙色を帯びた褐色,側方では厚さ 35~65 μm,上部では厚さ50–90 μm.子嚢下層は厚さ 15– 45 μm.周糸は長さ 20–25 μm,ほぼ等直径で,1~1.5 μm,先端は顕著に尖ったり,丸くなったりはしない.子嚢層は幅140~280 μm,高さ170~270 μm,I + 赤みがかる(子嚢層内ゼラチンのみ.子嚢と子嚢胞子はI−).子嚢は60–80 x 約 10 μm,オキュラーチャンバーははじめ広く,後に目立たなくなる.子嚢胞子は1子嚢中に8個生じ,卵形,13~17 x 5~6 μm,無色,並行4室,薄壁(細胞壁の厚さ0.5~1 μm),ハロを欠く.

【化学成分】-

【分布と生態】千葉県から知られる.暖温帯の,丘陵地帯の林縁の水路の底,あるいは渓流の河畔の岩上で見つかった.

ヤマトムキミゴケ/大和剥実苔

Psoroglaena japonica H.Harada

【異名等】

【文献1】Harada H. 2003. Psoroglaena japonica (lichenized Ascomycota, Verrucariaceae), a new species from Chiba-ken, central Japan, with notes on Psoroglaena. Lichenology 2(1): 5-10.

執筆:原田浩,2021