#354 Staurothele iwatsukii H.Harada

 

淡水生の痂状地衣の中では,被子器を生じ,子嚢層に緑藻が分布することで特徴づけられる.

 

【外部形態】地衣体は痂状,岩上生,連続し,半ば区画化し,暗いか幾らか明るい褐色,光沢はないか,わずかにあり,平滑,粉霜を欠く.地衣体周辺にはしばしば,類白色のプロタルスがある.被子器はふつう区画の中央に1個ずつ生じ,地衣体に埋もれ,生長とともに膨れ(地衣体が薄い場合は顕著),孔口の周辺は円盤状にごく暗い褐色からほぼ黒色(直径0.1~0.5mm).粉子器は地衣体に埋もれ,孔口周辺の直径0.05mm程度が褐色となるのみで目立たない.

【内部形態】地衣体は厚さ110~480μm.上皮層は厚さ20μmまで,表面近くでは多少とも褐色で残りは無色,髄層からわずかに分化し,真正異形菌糸組織,細胞は直径2.5~4μm,細胞壁は厚さ約1μm.髄層は厚さ40~170μm,亜異形菌糸組織から真正異形菌糸組織,共生藻細胞は概ね均一に分布するか,多少とも垂直の列をなす.暗色の基層は顕著で,厚さ90~250μm,亜異形菌糸組織から真正異形菌糸組織,時に部分的に繊維菌糸組織,最上層はごく暗い褐色かほぼ黒色,他は褐色.外殻は暗色の基層と完全に融合し,上部では厚さ50μm程度.果殻は無色から多少とも褐色,側方と基部で厚さ5~20μm,上部で厚くなり時に厚さ120μmに達する.周糸は長さ30~40μm.子嚢層内共生藻は長方形から桿状で長さ(2~)5~(~9)μm,幅約2μm.子嚢は棍棒状で,45~75×15~20μm.子嚢胞子は1子嚢中に8個(ときに6個),20~33×8~12μm,無色から,ごく淡い褐色,あるいは黄色みがかり,石垣状多室,4~7の横の隔壁と,1~2の縦の隔壁がある.粉子器はStaurothele型.粉子は桿状,3~5×約1μm.(文献1を改変)

【化学成分】-

【分布と生態】本州の岐阜県以西と四国から記録がある.河川の中・上流域において,多少とも開けた河畔の,水辺の岩上に生育.

ミドリサネゴケ/緑実苔

Staurothele iwatsukii H.Harada

【異名等】

【文献1】Harada H. 1992. A taxonomic study on the lichen genus Staurothele (Verrucariaceae) in Japan. Nat. Hist. Res. 2(1): 39-42.

執筆:原田浩,2021