#355 Sticta fuliginosa (Dicks.) Ach.

シアノバクテリアをフォトビオント(共生藻)とする葉状地衣で,地衣体は薄く,裂片は幅広く余り分枝せず,背面が暗紫褐色から暗褐色で裂芽を生じこと,腹面は短い淡褐色のトメンタで覆われ,小さく,底部が白色の盃点を生じることで特徴づけられる.

 地衣体が薄く,背面が暗褐色で裂芽を生じ,腹面に淡色のトメンタを生じる点で,本種は一見するとイワノリ科のツブカワキノリ(Leptogium saturninum)に似ることがある.しかし後者は腹面に盃点がないので区別は容易である.

 

【外部形態等】地衣体は葉状,シアノバクテリアをフォトビオント(共生藻)とする.地衣体は薄く,柄を生じず,はじめ概ね円形だが,(垂直面に付着するとき)上方への生長は緩やかで概ね基物に圧着する一方で,下方では裂片が広がるとともに伸長し基物から斜上ししばしば先端がわずかにめくれ上がる.伸長した裂片はあまり分枝しない.背面は紫褐色から暗褐色,やや光沢があり,伸長した裂片ではあまり目立たない,多少とも不完全な網目状のような隆起があり,隆起上をはじめとして背面に広く粒状からサンゴ状の裂芽を生じる.腹面は淡褐色のトメンタを密に生じ,ふつう直径0.5mm以下の,著しく窪んだ盃点(底部は白色)を生じる.

【化学成分】ー

【分布と生態】本州~四国(文献1).主に山地帯(冷温帯)で樹皮着生.

 

コウヤクゴケ/膏薬苔

Sticta fuliginosa (Dicks.) Ach.

【異名等】

【文献1】吉村庸.1974.原色日本地衣植物図鑑.349 pp., 48 pls.保育社,大阪市.

執筆:原田浩,2023
 


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