#357 Strigula aquatica H.Harada

 

暖温帯の河川中・上流において,森林内の河畔岩上の半淡水環境と,河畔から離れた森林内の岩上に生育する.このような場所に生育する被果地衣類の中では,地衣類が淡色であることと,子器がやや紫色を帯びることが特徴.

 

【外部形態】岩上生.地衣体は痂状,基物表面を覆い,平滑,連続し亀裂を欠くか,多少とも亀裂があり半ば区画化し,灰緑色から灰色,灰褐色,淡褐色,淡帯紫(灰)褐色,光沢は無く,ゼラチン化しない.プロタルスは類白色,フィルム状.子器は多数生じ,散在し,時に集合し,ドーム状,時に概ね半球形,直径 (0.15~) 0.25~0.6 mm,基部はしばしば輪郭は明瞭だが,通常はくびれず,多少とも淡い紫褐色から暗い紫褐色の部分が孔口を中心とした頂部を占め,時に基部まで広がり,基部は地衣体に覆われる;孔口は頂生で,乳頭状に突起するか目立たず,白色あるいは周囲と同色.粉子器(小粉子器)はまれ,被子器に似てドーム状から半球形だが小さく,直径 0.1~0.2 mm.

【内部形態】地衣体は顕著な皮層とエピネクラルレイヤーを欠き,厚さ 20~110 μm,主に上部が褐色を帯びるか,概ね無色,多少とも真異型菌糸組織化するか,短く概ね丸い菌糸細胞からなり菌糸間に空隙があり,±基物岩石の破片を含む.被子器は高さ 150~350 μm,幅 130~380 μm(外殻を除く).外殻は孔口周辺に限られるか,果殻底部までの半ばまで伸び,淡褐色で,孔口付近か上部では時に多少とも暗い褐色,直径 350~600 μm,上部では果殻と融合し, ±基物岩石の断片を含む.果殻は上部では外殻と融合し多少とも褐色,下部では無色,基部では厚さ 20~40 μm.子嚢下層は上面が窪み,中央で厚さ 15~25 μm.子嚢層は非アミロイド,顕著なゼラチン質を欠く.側糸は概ね分枝せず,直径約 1.5 μm,顕著なゼラチン質で覆われず,容易に折れ曲がる.子嚢は円筒形か棍棒状で,70~105 × 約 15 μm,顕著なトールスと,円筒形のオキュラーチャンバーがある.子嚢胞子は各子嚢に8個生じ,概ね紡錘形,26~43 × 6~9 μm,無色,平行(6~)8(~9)室,中央の隔壁の箇所でわずかにくびれ,薄壁(約 0.5 μm,隔壁は 0.2 – 0.5 μm),外膜を欠く.小粉子器は地衣体に半ば埋もれ,内腔は単一.小粉子は長さ 2~2.5 μm,直径0.5~1 μm,単室.(文献1を一部改変)

【化学成分】-

【分布と生態】主として暖温帯.本州では栃木県以西,四国,九州から記録がある.水辺の岩上から,森林内の岩上にまで広がる.

サワマンジュウゴケ/沢饅頭苔

Strigula aquatica H.Harada

【異名等】

【文献1】Harada H. 2016. Saxicolous species of the genus Strigula (lichenized Ascomycota, Strigulaceae) in Japan. Lichenology 14(2): 73-89.

【文献2】Harada H. 1998. Strigula aquatica (lichens, Strigulaceae), a new saxicolous pyrenolichen from Japan. Nova Hedw. 66(3-4): 419-423.

執筆:原田浩,2021