#360 Synalissa fluviatilis H.Harada

 

開けた河畔の,通常は水没しない岩上で発見された,ラン藻地衣.微小な樹状で,赤みがかるのが特徴.近縁のアカツブノリSynalissa symphoreaは河畔には出現せず,石灰岩上に生育する.

 

【外部形態】地衣体は岩上生,樹状,たいていは高さ 1.5~2.5 mm,繰り返し分枝し,集合し密なクッション(直径5~10mm)を形成する.主枝はニ叉分枝をし,分枝間は広く(たいてい 60~90°),等直径(断面は丸い),ふつう直径は 0.1~0.2 mm,黒みがかった赤.裂芽状の突起が主枝先近くでは密生することが多く,直径はまちまち,基部でくびれ,分枝と同色.子器は盤状で,頂生,直径 0.2~0.5 mm,はじめ黒みがかった赤(いくらか周りの分枝より淡い),子器盤ははじめ窪み,いくらか目立たず(ほぼ周りの地衣体と同色でやや淡い),後に目立ちやすくなり,ほぼ平坦か幾らか突出し,暗い赤褐色から黒みがかった赤.果殻縁部が成熟時に認められ,暗橙褐色(子器盤より淡い),すぐに目立たなくなる.果托は周りの地衣体と同色,はじめ平滑だが,すぐに裂芽状の突起で覆われる.

【内部形態】分枝はゼラチン質で充満し,皮層と菌糸のみからなる中軸を欠き,周囲(表面近く)では暗い褐色を帯びた赤色,他は無色.フォトビオントは単細胞性,単一か対をなし,たいていは 4~7 × 3~5 μm,分枝表面近くでは密で,中央ではまばら.菌糸はゼラチン質の基質に埋もれ,繊維状に伸長し,直径約1 μm,分枝癒合する.果殻は明瞭で,子器縦断面においては倒三角形,表面で幅 50~75 μm,表面付近では赤褐色を帯び,下方では無色. 子嚢下層は上方が平坦,中央で厚さ 60 μm,造嚢糸が密集する.子嚢層は厚さ100~115 μm,概ね無色,ときに最上部で褐色がかる.側糸は分枝癒合し網目状となり,概ね直径は1.5 μm,癒合部位では時に膨れ,隔壁部分ではわずかにくびれ,顕著な帽を欠く.子嚢は概ね円筒形,約 100 × 10~15 μm,顕著な頂部の肥厚を欠く.子嚢胞子は1子嚢中に8個生じ12~15 × 7~8 μm,楕円形,単室,薄壁.(文献1を一部改変)

【化学成分】-

【分布と生態】岐阜県の飛騨川の中流域(暖温帯)において,開けた河畔の岩上で発見された.

カワアカツブノリ/河赤粒海苔

Synalissa fluviatilis H.Harada

【異名等】

【文献1】Harada H. & Kawakami S. 2018. Synalissa fluviatilis sp. nov. (lichenized Ascomycota, Lichinaceae) from Gifuken, central Japan. Lichenology 17(2): 45–50.

執筆:原田浩,2021