#386 Verrucaria kiyosumiensis H.Harada | |||||
淡水生の痂状地衣.日本産淡水生アナイボゴケ属の中で本種は以下の形質により特徴付けられる.被子器は,裸出しほぼ球形,小さく(直径0.15~0.25 mm),基部はくびれ,被子器壁(断面)は暗紫褐色.外殻と果殻は互いに圧着し区別が困難で,周糸は長さ10~15 μmで先端がとがり,子嚢胞子は比較的小さく(12~16 × 5~7μm),地衣体は薄くて目立たない. 被子器が小さく,ほぼ球形に裸出することから,淡水生種の中ではタカゴサワイボ ゴケ V. takagoensis に似る.しかし後者は地衣体が暗色であることと,明らかに子嚢胞子が小さいこ とで区別できる.また,マルミゴケ Thelidium japonicumをはじめとするマルミゴケ属(子嚢胞子が2室か並行4室)や,クロマルゴケPorina guentheriなどマルゴケ属Porina(子嚢胞子が並行多室,共生藻がスミレモ類)に似る.(文献1を改変)
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【外部形態】地衣体は岩上生で薄く,緑から緑褐 色,目立たない.被子器は顕著に突出し,ほぼ球形 か半球形で,基部がくびれ,直径0.15 – 0.25 mm, 表面は平滑で黒く,多少とも光沢があり,頂部は丸 く,時にわずかにへこむか,乳頭状に突起し,周り と同色か白っぽく,孔口は目立たない. 【内部形態】被子器壁は側部で厚さ20 – 30 μm,上 部では極めて暗い紫褐色,他は暗い紫褐色,基部で は無色,菌糸細胞壁は顕著に肥厚する.子器は外殻 も含め球形.外殻は果殻に圧着し境界が不明か,基 部ではわずかに果殻より離れる.周糸は中央部で長 さ10 – 15 μm,わずかに分枝するか分枝せず,先 細りで先端がとがる.子嚢胞子は12 – 16 × 5 – 7μmでハロを欠く.(文献1を一部改変) |
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【化学成分】- 【分布と生態】千葉県のみから記録がある.暖温帯の森林内の湿岩上で発見された.(文献1,2) |
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キヨスミサワイボゴケ/清澄沢疣苔 Verrucaria kiyosumiensis H.Harada |
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【異名等】― |
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【文献1】Harada H. 2012 Taxonomic Study on the Freshwater Species of Verrucariaceae of Japan (2). Genus Verrucaria. Lichenology 10(2): 97-135. 【文献2】Harada H. 2001. Taxonomic notes on the lichen family Verrucariaceae in Japan (XIII). Verrucaria kiyosumiensis sp. nov. and V. takagoensis sp. nov. from Chiba. Hikobia 13: 405-409. |
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執筆:原田浩,2021 | |||||
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