#395 Verrucaria takagoensis H.Harada

 

淡水生の痂状地衣.淡水生アナイボゴケ種の中では以下の形質により特徴づけられる.地衣体は黒っぽく,薄く,被子器は小さく[直 径 0.1 (~ 0.15) mm],半球形からほぼ球形に裸出し,基部がくびれ,子嚢胞子は小さい(6~7 × 4~5 μm).被子器が小さいため,ルーペを使っても現地での確認は困難である.外部形態ではマルゴケ属 Porinaに似た種があるが,これらは側糸があり子嚢胞子が平行多室で,共生藻がスミレモ科であることで容易に区別できる.(文献1を改変)

 

【外部形態】地衣体は極めて薄く,連続し割れず,褐色から暗褐色.被子器は突出し,ほぼ球形か半球形で基部はくびれ,直径0.1 (~0.15) mm,極めて暗い褐色(通常は地衣体より暗い),孔口は目立たない.

【内部形態】地衣体は厚さ25 μmまで,皮層を欠き,暗色の基層を欠き,部分的に褐色化し,異型菌糸組織からなり,菌糸間の空隙を欠く.被子器はほぼ球形.外殻は上部では果殻と癒合し,下方では果殻に圧着し側方に広がらず,果殻基部の高さまで達し,極めて暗い褐色で,厚さ15~20 μmで,菌糸壁は肥厚する.果殻は下部では確認でき,ほぼ無色,厚さ5 (~10) μm.周糸は中央部では概ね長さ5~10 μm,ほぼ分枝せず先細り先端はとがり,ゼラチン質の基質に埋もれる.子嚢胞子は 6~7 × 4~5 μm,ハロを欠く.(文献1を一部改変)

【化学成分】-

【分布と生態】千葉・静岡・徳島・高知から記録がある.暖温帯の,森林内の渓谷の河畔岩上に生育.(文献1)

タカゴサワイボゴケ/高宕沢疣苔

Verrucaria takagoensis H.Harada

【異名等】

【文献1】Harada H. 2012 Taxonomic Study on the Freshwater Species of Verrucariaceae of Japan (2). Genus Verrucaria. Lichenology 10(2): 97-135.

執筆:原田浩,2021