#396 Verrucaria yoshimurae H.Harada

 

半淡水生の痂状地衣.淡水生アナイボゴケ属の中で以下の形質により特徴付けられる.地衣体は連続し,半ば区画化し,淡褐色(標本庫で保管すると桃色を帯びる),子器は地衣体に埋もれ,その周囲に黒点あるいはその集合した黒い輪で囲まれる.暗色の基層は暗褐色だが,上層との境界はしばしば不明瞭で,暗色の顆粒が散在する.子器は断面では上端が切形で,外殻を欠き,果殻は上部で顕著に肥厚し,子嚢胞子 は18~27 × (6~) 7~11 μmでハロを欠く.

 本種に似るアオジロアナイボゴケ V. praetermissaは,地衣体は淡灰色で,黒点(断面では暗色の顆粒)を欠き,外殻が明瞭で,暗色の基層(外殻に由来)と上層との境界が明瞭で,子嚢胞子がハロで覆われることで容易に区別できる.(文献2を改変)

 

【外部形態】地衣体は連続し,半ば区画化し,割目はジグザクで,表面は光沢が無く,ごく淡い褐色で(まれに淡い灰緑色で青味を帯びる),標本庫では次第に淡桃褐色から桃褐色へと変色する.まれに黒点が地衣体表面にごくまばらに散布するが,通常は子器の周辺のみに痕跡的に見られる.被子器は地衣体に埋没し,頂部のみ(半透明で灰色か褐色あるいは暗灰色か暗褐色)を裸出し,黒点あるいは黒い輪(黒点 の集合)で取り巻かれる.

【内部形態】地衣体は比較的厚く,厚さ110~500 μm,暗色の顆粒がある.分化した皮層はなく,髄層は異型菌糸組織で,菌糸間の空隙は無いか,ごく目立たない.暗色の基層は顕著で,暗褐色,異型菌糸組織だが髄層上層との境界はしばしば不明瞭で,極めて暗い褐 色の顆粒が散在する.被子器は楕円形で上端が切形であるか,釣鐘型(逆さの)で,外殻を欠く.果殻は顕著で,上部では厚さ75~110 μm,わずかに褐色か灰色,側部と下部では厚さ約10 μmで無色.周 糸は中央部で長さ約25 μm,分枝し,概ね先細りし 先端はとがる.子嚢胞子は18~27 × (6~) 7~11 μm,ハロを欠く.(文献2を一部改変)

【化学成分】-

【分布と生態】岩手・三重・島根・徳島・高知から記録がある,半淡水生種.暖温帯の森林内の渓谷において,河畔あるいはその近くの岩上に生育する.

ヨシムラサワイボゴケ/吉村沢疣苔

Verrucaria yoshimurae H.Harada;文献1,2

【異名等】

【文献1】Harada H. 2011. Taxonomic study on the freshwater species of Verrucariaceae of Japan (1). Verrucaria praetermissa and V. yoshimurae sp. nov. Lichenology 10: 33-41.

【文献2】Harada H. 2012 Taxonomic Study on the Freshwater Species of Verrucariaceae of Japan (2). Genus Verrucaria. Lichenology 10(2): 97-135.

 

執筆:原田浩,2021