#403 Agonimia deguchii H.Harada

 

半淡水生の被果地衣類.地衣体がごく微小な,褐色を帯びた鱗片からなること,子器がほぼ裸出し黒色であること,子嚢胞子が石垣状多室であることから,淡水生地衣類の中で特徴づけられる.

 

【外部形態】地衣体は微小な鱗片状で,円形となり直径約0.05mm,単葉ではじめ散在するが,後に集合し連続し,直径0.2mmほどになり分枝する.背面は多少とも突出し,褐色を帯びた灰色,光沢はないか,わずかにある. 被子器は地衣体の微小な鱗片の縁か間に生じ,ほぼ全体を裸出し,黒色,光沢を欠くかわずかにあり,直径0.1か0.12mmまではほぼ球形で表面は平滑だが,次第に直径が大きくなるにつれ相対的により顕著に伸長し(細長くなり),直径 0.2 mm,高さ0.3 mm程度になるが乾燥時には扁平となる.頂部の孔口周辺ははじめ不明瞭だが,後に白色となり乳頭状に突出する.

【内部形態】地衣体は厚さ25~40μm,全体が異形菌糸組織か亜異形菌糸組織で,菌糸細胞壁は薄く(0.5~1μm),単一細胞層の皮層[厚さ(3~)5μm]があり,これらは乳頭状突起を欠く.被子器壁は側方で厚さ25~35μm,概ね亜異形菌糸組織か,多少とも縦に伸びる細胞からなり,内層と中層は無色,外層はごく暗い褐色からほぼ黒色の,多少とも肥厚した細胞壁からなり,中層は肥厚しない暗色の細胞壁があり,表面(外層)はぶつぶつとした突起で覆われる.子嚢胞子は1子嚢中に8個生じ,33~43×13~19μm,石垣状多室,薄壁,無色.

【化学成分】-

【分布と生態】三重県の暖温帯の渓流河畔の岩上で発見された.

 

デグチツブゴケ/出口粒苔

Agonimia deguchii H.Harada

【異名等】

【文献1】Harada H. 2013. Agonimia deguchii (lichenized Ascomycota, Verrucariaceae), a new saxicolous species from central Japan. Hikobia 16: 307-310.

執筆:原田浩,2021