#417 Lecanora subimmergens Vain.

 

チャシブゴケ属Lecanoraの中で,本種は以下の形質により特徴づけられる: 岩上生,地衣体は連続し多少とも区画化し,灰白色,子器は比較的大きく,明らかに突出し,子器盤は赤褐色から暗赤褐色,果托にシュウ酸カルシウムの大きな結晶を含む.

 

本属においては,暖温帯の岩上に出現する代表種である.

 

【外部形態】地衣体は痂状,連続し,概ね平滑,平坦,多少とも区画化し,灰白色.地衣体周辺のプロタルスは類白色の繊維状となる.

子器はレカノラ型,直径2 mm以下,明らかに突出し,基部は明らかにくびれる.子器盤は赤褐色から暗赤褐色,ほぼ平坦からわずかに突出し,粉霜を欠く.縁部は子器盤より突出し,薄く,地衣体と同色.

【内部形態】果托に顕著なシュウ酸カルシウム結晶を含む.子嚢上層に顆粒を欠く.子嚢胞子は1子嚢中に8個生じ,10-17 × 5-7 µm(文献1)

【化学成分】アトラノリン,ゼオリン(多量)(文献1)

【生態】岩上生.海岸から内陸まで

【分布】北海道~九州,沖縄,暖温帯周辺(文献1).

イシガキチャシブゴケ/石垣茶渋苔(文献2)

Lecanora subimmergens Vain., Bot. Mag. Tokyo 35: 51 (1921).

【異名等】Lecanora glaucodeella Vain., Bot. Mag. Tokyo 35: 50 (1921)(文献1)

= Lecanora kozukensis Räsänen, J. Jpn. Bot. 16: 92 (1940)(文献1)

= Lecanora nakayamae Yasuda ex Räsänen, J. Jpn. Bot. 16: 92 (1940)(文献1)

【文献1】 Miyawaki H. 1988./ Studies on the Lecanora subfusca group in Japan./ J. Hattori Bot. Lab. (64): 271-326.

【文献2】宮脇博巳・原田浩.2016./ 日本産チャシブゴケ属(Lecanora)の新和名./ Lichenology 15: 123-125.

執筆,原田浩,2024