#449 Bacidia inundata (Fr.) Körb.

 

淡水生種の中では以下の形質により特徴づけられる.子器がレキデア型(あるいはビアトラ型)で,断面では果殻等がほぼ無色で,子嚢胞子が披針形で並行4室,地衣体は微細な円盤等からなり,プロタルスが繊維状で目立つ.

 

【外部形態】地衣体は周辺部では微細な円盤・イボ状突起・顆粒等(直径 0.05~0.1 mm)からなり,これらは互いに遊離し,後に連続し一体化し,概ね平坦となるが,時に更にその表面が微細な円盤・イボ状突起などに覆われ,割れ目が入り半ば区画化し たように見え,灰緑色,光沢はなく,粉霜を欠き,粉芽・ 裂芽を欠く.地衣体周辺部でプロタルスはしばしば明瞭 で,白い繊維状.地衣体の割れ目の間には,しばしば白いヒポタルスが認められる.子器は多少とも密集あるいは散在し,レキデア型(あるいはビアトラ型),無柄,直径 0.25~0.8 mm.果殻は子器盤周囲では灰褐色(子器盤より淡い)で時に桃色を帯び,基部では黒褐色,子器盤とほぼ同じ高さで,境界は多少とも不明瞭.子器盤は最初はほぼ平坦で,後にわずかに突出し,多少とも灰色を帯びた暗褐色からほぼ黒色,概ね光沢を欠き,粉霜を欠き,平滑.粉子器は未見.

【内部形態】果殻は厚さ20~50 µm,概ね無色だが部分的に紫がかり,亜異形菌糸組織から異形菌糸組織,噴水状に配列する菌糸からなり,菌糸壁は互いに強く合着し連続し,子器縁部近くの中心方向では菌糸内腔は狭く(幅 1~2 µm),遠心方向では広い(幅約 3 µm)傾向があるが,子器の基部では全体的に幅が広くなり(幅 3~5 µm),より異形菌糸組織の傾向が強い.ヒポテシウムは概ね無色で,菌糸壁は互いに強く合着するが,菌糸は細く(内腔直径約 1 µm),様々な方向に向いて錯綜し,密集する.子嚢下層は概ね無色だが部分的に紫がかり,概して薄いが(5~10 µm),時に部分的に厚さ約 25 μm に達しその時はヒポテシウムとの境界は不明瞭とな る.子嚢層は厚さ 40~55 µm,概ね無色だが,部分的に紫がかり,I+ 青.子嚢は 40~48 × 6~9 µm,棍棒状, Bacidia-type.子嚢胞子は 27~32 × 2~2.5 µm,披針形,無色,平行4室,薄壁,くびれず.(以上は文献1を一部改変)

【化学成分】-

【分布と生態】岐阜県の冷温帯域の,河川上流の河畔の岩上で確認された.

 

サワハリイボゴケ/沢針疣苔

Bacidia inundata (Fr.) Körb.

【異名等】

【文献1】原田 浩 . 2017. 日本新産の淡水生地衣類,サワハリイボゴケBacidia inundata(イボゴケ科).Lichenology 16(2): 129‒133.

執筆:原田浩,2021