#451 Porina chlorotica (Ach.) Müll.Arg.

 

半淡水環境にも出現する,被果地衣類.岩上生・樹皮着生のマルゴケ属Porinaの中で,本種は以下の形質により特徴づけられる.被子器は黒っぽく半球形で,直径0.1~0.35 mm,顕著な果托はなく,被子器壁にシュウ酸カルシウムの結晶を欠き,外殻はごく暗い紫褐色,子嚢胞子は14~27 × 4.5~7 μm,並行4室.同属には似た種が幾つかあるが,被子器の切片を作製し,被子器壁の色と,子嚢胞子を観察すると確実に区別できる.

 

【外部形態】地衣体は痂状,基物上生,連続し,ごく薄く,部分的に剥がれ落ちやすいことはなく,平滑で,わずかに光沢があるか光沢はなく,紫を帯びた灰色から紫を帯びた灰褐色,顕著なプロタルスを欠き,裂芽・粉芽を欠く.被子器は明瞭な果托を欠き, 直径0.1~0.35 mm,半球形,基部は(±)くびれて境界は鋭く,ほぼ黒色,(±)褐色あるいは紫褐色を帯び,平滑,わずかに光沢があり,頂部は丸く,目立たない孔口の付近は暗色.

【内部形態】地衣体は明瞭な下菌糸を欠き,厚さ10~20 (~30) μm,多少とも異形菌糸組織化し,シュウ酸カルシウム結晶を欠き,皮層は欠くか時に厚さ約 10 μmに達する.果托はz船体が外殻へと変じ,外殻は果殻に圧着し果殻基部の高さにまで達し,側方に広がらず,側方で厚さ 15~ 25μm,ごく暗い紫褐色からほぼ黒色,基部方向では共生藻細胞が混じることがあり,菌糸の内腔はたいてい直径 1~2 μmで,伸長し様々な方向に走り,細胞壁は互いに固く合着する.果殻は紫褐色から無色,側方と基部で厚さ 10 – 20 μm,情報では外殻と同色となり区別できなくなる(厚さ計25~40μm).周糸は不明瞭.側糸は分枝せず,直径0.5~1μm.子嚢は棍棒状から紡錘形,約 75 × 10μm,薄壁,頂部の肥厚等の構造は見られない.子嚢胞子は14~27 × 4.5~7μm,並行4室,無色,薄壁,厚さ約 1μmの外膜で覆われるか,明瞭な外膜を欠く.(文献1を一部改変)

【化学成分】-

【分布と生態】高知県と宮崎県から確実な記録がある.暖温帯の,渓谷沿いの湿潤な森林内の岩上で見つかった.(文献1)

マルゴケ/丸苔

Porina chlorotica (Ach.) Müll.Arg.

【異名等】

【文献1】Harada H. 2016. Saxicolous and corticolous species of Porina (lichenized Ascomycota, Porinaceae) of Japan (part 2). Lichenology 14(2): 91-118.

執筆:原田浩,2023